2011/10/29

StrengthsFinder (ストレングス・ファインダー)

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1年半くらい前にやったStrengthsFinder (ストレングス・ファインダー)のメモをたまたま見返す機会があったので,ちょっと転載してみます.
ストレングス・ファインダーとは,『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう あなたの5つの強みを見出し、活かす』という本にある,自分の強みをみつける分析ツールみたいなものです (専用IDが必要).書名はなんだか胡散臭いですが,内容は悪くなかったと記憶しています.

以下,私の結果です.

1. 着想
あなたは着想に魅力を感じます。では、着想とは何でしょうか? 着想とは、ほとんどの出来事を最もうまく説明できる考え方です。あなたは複雑に見える表面の下に、なぜ物事はそうなっているかを説明する、的確で簡潔な考え方を発見すると嬉しくなります。着想とは結びつきです。

2. 戦略性
戦略性という資質によって、あなたはいろいろなものが乱雑にある中から、最終の目的に合った最善の道筋を発見することができます。
そして、選ばれた道――すなわちあなたの戦略――にたどり着くまで、あなたは選択と切り捨てを繰り返します。そしてこの戦略を武器として先へ進みます。

3. 社交性
そして一度そのような関係ができ上がると、あなたはそこでそれを終わりにしてまた次の人へ進みます。これから出会う人は大勢います。新しい関係を築く新たな機会があります。これから交流を持つ新しい人の群れがいます。あなたにとって友達でない人はいません。ただ、まだ会っていないだけなのです。沢山の友達が。

4. 最上志向
優秀であること、平均ではなく。これがあなたの基準です。平均以下の何かを平均より少し上に引き上げるには大変な努力を要し、あなたはそこに全く意味を見出しません。平均以上の何かを最高のものに高めるのも、同じように多大な努力を必要としますが、はるかに胸躍ります。

5. 親密性
あなたは親密であることに心地よさを感じます。一旦最初の関係ができあがると、あなたは積極的にその関係をさらに深めようとします。あなたは彼らの感情、目標、不安、夢を深く理解したいと思っています。そして、彼らにもあなたを深く理解してもらいたいと願っています。


言われてみれば確かにそうかもしれないと思うところもしばしばでした (バーナム効果かもしれませんが).自分の弱みを自覚している人は少なく,強みを理解している人はもっと少ない,という言葉をどこかで聞いたことがありますが,そういうものなのかもしれませんね.

2011/10/27

『職業としての学問』

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マックス・ウェーバー著『職業としての学問』を読みました.

ポストにつけるかどうかは僥倖である.
学問が価値を示す時代はすでに終わった.
教育者は指導者 (自分の主張を押し付ける) ではない.

など,数十年後に読み返すと,もっと違った見方になるのかもなあ,などと思うようなところがいくつかありました.

いくつか印象に残ったフレーズを抜き書き.

学問に生きるものは,ひとり自己の専門に閉じこもることによってのみ,自分はここにのちのちまで残るような仕事を達成したという,おそらく生涯に二度とは味われぬであろうような深い喜びを感じることができる.

ある研究の成果が重要であるかどうかは,学問上の手段によっては論証しえないからである.それはただ,人々が各自その生活上の究極の立場からその研究の成果がもつ究極の意味を拒否するか,あるいは承認するかによって,解釈されうるだけである.

もし悪魔を片づけてやろうと思うならば,こんにち好んでなされるようにこれを避けてばかりいてはいられない,むしろ悪魔の能力と限界を知るために前もってまず悪魔のやり方を底まで見抜いておかなくてはならない.

2011/10/23

トピックから研究課題へ ("The craft of research" 3章)

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"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.
今回は,研究課題の立て方について書かれた部分のまとめです.

第3章 研究トピックから研究課題へ

3.2 幅広いトピックをひとつにしぼる

"action" wordsに注意する.これらがないと,トピックは静的なものになり,単なるclaimに終わってしまう.
conflict, description, contribution, developing, …

良い例
The history of commercial aviation

The contribution of the military in developing the DC-3 in the early years of commercial aviation

静的なトピックの例
The history of commercial aviation (topic)

Commercial aviation has a history (claim)

3.3 しぼったトピックから研究課題へ

研究トピックの立て方
  • 歴史について考えてみる
  • より大きな文脈の中でどう位置づけられるか?内部にどのような歴史があったのか?
  • 構造や構成について考えてみる
  • より大きな構造の中でどのようなはたらきをになっているか?システムとしてどのように統合されているか?
  • どうカテゴライズされるか考えてみる
  • 対象はどんなグループに分類できるか?他のものと比較してどうか?
  • 肯定的な問いを否定的なものにしてみる
  • ◯◯は300年間続いた → ◯◯はなぜ300年間しか続かなかったのか?
  • もし を考えてみる
  • もし◯◯が存在していなかったら?
  • 参考文献の示唆している問いについて考えてみる
  • たいてい考察の最後にopen questionが示してある.
  • いくつかの問いを比較してみる
  • いくつかの問いをまとめて,より重要なひとつの問いにしたり.

3.4 研究課題からsignificanceへ

  1. TOPIC: Name your topic.
  2. I am trying to learn about (working on, studying) _____,
    action words を用いて空欄を埋める.
  3. QUESTION: Add an indirect question.
  4. because I want to find out who/what/when/where/whether/why/how _____,
    So what? に答えられるだけのsignificanceをもっていなければならない.
  5. SIGNIFICANCE: Answer So what? by motivating your question.
  6. in order to help my readers understand _____.
    専門とする分野の人にとって重要なissueに触れている必要がある.


脚注

※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)

構成と論拠の修正 ("The craft of research" 14章)

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"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.
今回は,原稿の修正について書かれた部分からの抜き書きです.

14章 文章の構成と論拠を修正する

14.2 原稿の枠組みを修正する

読者が,即座に間違いなく,以下の3点を認識できるようにしておかなければならない.
  • イントロダクションの終わるところ
  • 結論のはじまるところ
  • 要点を提示している文章

14.3 論拠を修正する

参考: 論拠の構築

14.3.2 論拠の質を評価してみる

読者があなたの論拠を却下する原因はなんだろうか.
  1. あげられた証拠は十分か,信頼できるか,主張と明確に結びついているか?
    • ノートにとった数字と打ち込んだデータは一致しているか?
    • 引用やデータと主張との結びつきは明確か?
    • 主要な理由と,それを支える証拠のあいだのsubreasonsをすっとばしていないか?
  2. 論拠の妥当性を適切に見積もっているか?
  3. probably, most, often, mayなどの保険をかけておかなくて大丈夫か?
  4. あり得る他の見方や反論についてきちんと認識しているか?
  5. 文章にしていない根拠を,文章にして表現すべきか?

14.4 原稿の構成を修正する

  1. key termsは文章の全体を通して出現してきているか?
    1. イントロと結論にあるkey termを丸で囲ってみる
    2. 本文にある同じtermsも丸で囲む
    3. key termsと関連する語に下線をひく
    4. 大部分のパラグラフに,それらのkey termsがひとつも書かれていなかったら,読者は,あなたの原稿を不明瞭に感じるだろう.
  2. sectionやsub-sectionが始まることを表すシグナルは,明確に示されているか?
  3. 主要なsectionの始まりに,前のsectionとの関係を表すシグナルがあるか?
  4. ひとつひとつのsectionが全体とどう関係しているか明確にわかるか?
  5. それぞれのsectionについて,このsectionはどんな問いに答えているか?と考えてみること.答えられなかったら,その部分の削除を考えても良い.
  6. そのsectionの要点が簡潔に示されているか?
  7. そのsectionを性格づける見出しは個性的か?
  8. 全体を通した性格づけと変わるところがないなら,読者は,新たなアイデアが提示されていないと読むだろう. 他のsectionと同じであったなら,同じことが繰り返されていることになる.


脚注

※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)

2011/10/19

Rの勉強会 Kashiwa.R を開催します

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東京大学柏キャンパスでRの勉強会 Kashiwa.R を開催します.

概要

上級者から初心者まで,Rや統計解析に興味をもった人たちが,お互いの知識を交換しあって勉強できる会にしたいと考えています.発表者も募集してます!

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2011年11月11日 (金)
17:30-19:30
東京大学柏キャンパス 柏図書館 セミナー室2
終了後,食堂または総合研究棟で懇親会
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詳細はKashiwa.RのWikiをご覧ください.


動機

統計解析やRについて,いろいろな知識を吸収して視野を広げたいなと思ったのが,はじめの動機です.

数理統計解析やRには,実にさまざまな手法があり,使い方があります.
そして,ある分野では当たり前のように使われている手法やtipsが,実は他の分野では知られておらず,大きなbreak-throughを生み出す可能性を秘めているようなことは,往々にして起こり得ます.
しかし,それぞれの専門が高度になり細分化した現在,異なる分野の手法を個人ひとりの力で幅広く勉強するのはなかなか大変です.

そこで,誰もが気軽に参加して発表もできる勉強会があったらいいなと思ったわけです.
それぞれの知識や勉強したことをシェアして,研究や仕事でデータを解析する際に役立てられればいいなと考えています.

Rの勉強会としては,Tokyo.RTsukuba.Rなども開催されていますが,開催場所が (柏からだと) やや遠いのが難点です.
Kashiwa.Rとして,柏キャンパスやその周辺で勉強会を開催することで,
  • 近場で気軽に参加できる
  • 発表や意見交換を通じて,内外の学生・研究者の交流にもつながるかも
という利点・効果が期待できます.

というわけで,開催してみることにしました!


いろいろ

発表者・参加者募集中です!
どんなに「つまらない」ことでも結構です (前述のように,他の分野においてはそうではないかもしれませんし).
何かネタのある方は,ぜひ,MLWiki@tsutatsutaまでご連絡ください.
当日飛び入りも歓迎ですが,Wikiに出欠などを書いてくださるとうれしいです.

また,勉強会は,柏キャンパスの学生・研究者の学術交流を目指しているAcafeとの共催です.次回のAcafe開催は未定ですが,興味がありましたら,こちらのほうにもぜひご参加ください!

2011/10/18

Revising Style ("The craft of research" 17章)

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"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.

明瞭でわかりやすい英文を書く際に,17章 Revising Style は非常に参考になりそうなので,英文のまま引用します.本文では例があげられ詳しく説明されています.少しでも興味があればぜひ原書をご覧ください.

17.2 THE FIRST TWO PRINCIPLES OF CLEAR WRITING

17.2.1 Distinguishing impressions from Their Causes
For that, you need a way to think about sentences that connects an impression like confusing to what it is in the sentence, on the page that confuses you.

The principles focus on only two parts of a sentence: the first six or seven words and the last four or five. Get those words straight, and the rest of the sentence will (usually) take care of itself.

17.2.2Subjects and Characters
Readers will judge your sentences to be clear and readable to the degree that you make their subjects name the main characters in your story.

17.2.3 Verbs, Nouns, Actions
  • Express crucial actions in verbs.
  • Make your central characters the subjects of those verbs; keep those subjects short, concrete, and specific.

17.2.4 Diagnosis and Revision
To diagnose:
  1. Underline the first six or seven words of every clause, whether main or subordinate.
  2. Perform two tests:
    • Are the underlined subjects concrete characters, not abstractions?
    • Do the underlined verbs name specific actions, not generalness like have, make, do, be, and so on?
  3. If the sentence fails either test, you should probably revise.

To revise:
  1. Find the characters you want to tell a story about. If you can't, invent them.
  2. Find what those characters are doing. If their actions are in nouns, change them into verbs.
  3. Create clauses with your main characters as subjects and their actions as verbs.


17.3 A THIRD PRINCIPLE: OLD BEFORE NEW

Readers follow a story most easily if they can begin each sentence with a character or idea that is familiar to them, either because it was already mentioned or because it comes from the context.

To diagnose:
  1. Underline the first six or seven words of every sentence.
  2. Have you underlined words that your readers will find familiar and easy to understand (usually words used before)?
  3. If not, revise.

To revise:
  1. Make the first six or seven words refer to familiar information, usually something you have mentioned before (typically your main characters).
  2. Put at the ends of sentences information that your readers will find unpredictable or complex and therefore harder to understand.


17.4 CHOOSING BETWEEN ACTIVE AND PASSIVE

Rather than worry about active and passive, ask a simpler question: Do your sentences begin with familiar information, preferably a main character? If you put familiar characters in your subjects, you will use the active and passive properly.


17.5 A FINAL PRINCIPLE: COMPLEXITY LAST

17.5.1 Introducing Technical Terms
When you introduce technical terms new to your readers, construct your sentences so that those terms appear in the last few words.

17.5.2 Introducing Complex Information
Put complex bundles of ideas that require long phrases or clauses at the end of a sentence, never at the beginning.

17.5.3 Introducing What Follows
When you start a paragraph, put at the end of its first or second sentence the key terms that appear in the rest of the paragraph.


脚注

※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)

2011/10/16

イントロと結論 ("The craft of research" 16章)

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"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.
今回は,イントロダクションと結論について書かれた部分からの抜き書きです.

16章 IntroductionとConclusion

16.1 Introductionに共通する構造

Context + Problem + Response.

16.2 ステップ1: 共通の土台を確立する

共通の土台にある (すでに知られており明らかに問題がない) 話題からはじめる.そして,問題を提示する.
読者よ,おそらくあなたは◯◯について知っているだろう.しかし,あなたの知識には不足または不完全なところがある…

16.3 ステップ2: 問題を述べる

共通の土台を確立したなら,問題を提示することでそれを乱す.
研究上の問題の提示は以下2つの部分に分けられる.
・知識や理解が不完全であるという状態 (a condition)
・その状態の帰結 (consequences)

誰かが,それでどうなっちゃうの?と聞いてきてくれる場面が想像できるなら,この状態の解決は,十分な研究上の問題になり得る.
次にするのは,その帰結を,直接的なコスト (◯◯が不完全なので,より大きな問題である××が解決できない) または利益に変換したかたち (もし◯◯を明らかにできれば,××を決定できる) で,示すこと.

16.4 ステップ3: 自分のだした答えを述べる

Introductionの最後で,主張のポイントまたは解決策を明確に述べる.
または,ここでは示さないが,Conclusionや本文中で答えを提示すると約束する (point-last paper).しかし後者のスタイルは,読者に本文を読む (余計な) 時間を要求することになるため,推奨されない.

16.6 Conclusionを書く

16.6.1 主張の要点 (Main point) からはじめる

Conclusionのはじめのほうで,要点を述べる.既出であったら,またきちんと繰り返す.

16.6.2 新たな Significance や応用を述べる

要点を述べたら,なぜそれに意味があるのかを示す.

16.6.3 さらなる研究の必要性を示唆する

この研究からは結論がでたが,まださらなる研究が必要である.


脚注

※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)

論拠の構築 ("The craft of research" 7-11章)

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"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.
今回は,論拠を構築する,ということについて書かれた部分からの抜き書きです.

7章 良い論拠 (argument) を構築する

7.1 読者との対話としての論拠

p. 109
論拠は以下の5つの問いに答えることによって構築される.
-----
1. 主張 (claim) は何か?
2. その主張を支える理由 (reason) は何か?
3. その理由を支える証拠 (evidence) は何か?
4. 別な可能性 (alternatives) / もっと複雑な証拠 (complications) / 反対意見 (objections) を認識しているか?そしてそれらにどう対応するか?
5. 2の理由から1の主張が導かれるのを妥当 (relevant) にする原理 (principle) は何か? (この原理は根拠 (warrant) と呼ばれる)
-----

7.2 主張を支える

p. 111
・理由は,私たちの精神のはたらきによって思いつかれる.
・証拠は,「その外」の「物質的な」現実世界にあり,誰もがわかるようなかたちにして示さなければならない.

7.3 予期される問いかけや反論を認識し,それらに答える
7.4 理由の妥当性を保証する

p. 116
CLAIM because of RESON based on EVIDENCE...
ACKNOWLEDGEMENT AND RESPONSE I acknowledge these questions, objections, and alternatives, and I respond to them with these arguments…
WARRANT The principle that lets me connect my reason and claim is...


8章 主張を決める

8.2.2 主張を意味あるもの (significant) にする

p.124
もっとも意味のある主張は,研究者のコミュニティがこれまで深く信じてきた考えに変革を迫るものである.
読者は,研究が新たなデータを示しているだけでなく,そのデータを利用して,不可解な,矛盾した,問題になっていたトピックを解決したときに,その研究をより高く評価する.
さらに言うと,読者は,解決済みだと長く考えられていたトピックがひっくり返されたときに,新たな証拠をもっとも高く評価する.


9章 理由と証拠を組み立てる

9.3 証拠それ自体と,証拠を報告することを,きちんと区別しておく

p. 133
研究者は,読者と「証拠それ自体」を共有することはできない.

9.4.1 証拠を正確に報告する
もし自分自身が,その証拠にあやしいところがあることを認識しているなら,信用できないとしてその証拠を却下するのではなく,自分自身が懸念しているということを表すこと.そうすれば,不正直なふるまいとはならない.


10章 認識と対応

p. 139
あなたの論拠に対し読者が問いかける可能性があるのは,以下の2つの点に関してである.
・内部的な健全性 (intrinsic soundness): 主張の明確さ,理由の妥当性,証拠の信用性.
・外部的な健全性 (extrinsic soundness): 問題を別な視点でとらえられる可能性,見過ごされていた証拠,同じトピックに対する他者の議論.

10.1 読者がするように,あなた自身の論拠にケチをつけてみる

自分に間違ってもらいたいと考えている利害関係者のような視点から,自身の論拠を読んでみる.そして,彼らが投げかけると予期されるもっとも厳しい反論について,あらかじめ答えておく.彼らがそれを実際に投げかけてくる前に.

10.3.2 答えられない問いかけを認識しておく

もし,解決したり説明しきったりできない欠点を発見したなら,それを避けるために,問題を再定義したり,論拠を再構築しなければならない.しかしそれが不可能なら,タフな決断が必要とされる.
読者が気づかないことを期待してその欠点を無視することは可能だが,それは不正直である.もしみつかれば,その論拠のみならず,あなた自身の倫理や評判にも疑惑の目が向けられ,致命的なダメージを受けるだろう.
ひとつの方法は,素直だが,実際に効果のあるものだ.欠点をしっかりと認識し,
・その他の議論で欠点が補われている
・欠点は深刻だが,さらなる研究によって解決される
.欠点があるため主張をすべて受け入れてもらうことはできないが,この主張は問題に対して洞察を与え,より良い答えが必要であることを示唆した
ということを示す.

10.5 認識と対応のための語彙

実例がいろいろ.
p. 147
may は一般的な認識の語句である.
p.148
but, however, on the other hand など不賛成のシグナルとともに,反論を開始する.


11章 論拠

11.1 論拠とは,日常的な理由付けである

p. 153
理由付けの背後にあるロジックは以下のとおり.
一般的に言われている論拠が真であるならば,それに関わる何か特定の例もまた真である.

11.5 いつ論拠を言明するか考えてみる

p. 163
・読者が正しいと認めたがらないような主張をするとき.
読者が反抗すると考えられる理由や主張を展開する前に,読者が受け入れると考えられる根拠を示すことからはじめるのが良い.そうすれば,少なくとも,主張が合理的でないと見られてしまうのを防ぐくらいにはなる.


脚注

※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)

2011/10/14

『これから論文を書く若者のために』再読

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酒井聡樹 著『これから論文を書く若者のために 大改訂増補版』 (共立出版, 2006年) を再読して,内容の覚え書き ※1 と感想です.
論文を書こうとする大学院生のバイブルのような本ですので,未読の方はぜひご覧になることをおすすめします.


覚え書き

イントロ

以下の2点を説明する必要がある.

・何をやるのか
・どうしてやるのか

どうしてやるのか はさらに以下のように分解できる.
・どういう問題があるのか
・どうしてその問題に取り組むのか
・その問題の解決のために「何をやるのか」を行なう理由

どこまで説明するか?

その学術雑誌の読者の共通理解のところまでさかのぼって.

イントロ折り紙

3. どうして取り組むのか: どうしてその問題に取り組むのかの説明
2. 何を前にして: どういう問題があるのかの説明
1. 何をやるのか: その論文でやったこと
4. どういう着眼で: その問題の解決のために「何をやるのか」を行なう理由の説明

考察

こういうことを明らかにしたと明確に主張することが考察の章の使命である.
ブレークダウンすると,
・結果の章で提示したデータに基づいて,こういうことを明らかにしたという主張を展開する
・イントロダクションで提起した問題の解決に向けてどう貢献したのかを述べる
・その問題を解決したことでもたらされる,より一般的な学術的意義を述べる
・今後の発展を述べる
・結論を述べる
ということになる.

論文を書くというのは,自分の主張を小さくしていく作業である.


アブストラクト

アブストラクトは,世界に向けて発信する,論文の紹介記事.
具体的には以下に気をつける.
・どうしてやるのかは不要
・結論は明確に
・短い文章で

図表

図にするか表にするか?
あなたが説明しやすい方を選ぶ.

査読と改訂

レフリーのコメントは,英語を習いたての中学生のように読むべきだ.

改訂をするうえでの心構え

・アクセプトが保証されていると思わない
・レフリーというより,担当編集委員を説得することを心がける (編集委員は,リジェクトして論文を減らすのがお仕事)
・労力を惜しまない
・全コメントに対応して改訂した後,改訂稿の全体を読み直し,筋が通っているかどうか確認する
・一日でも早く改訂して返送する

改訂の際に守るべき約束事

・レフリーと担当編集委員の,すべてのコメントに対応する
・直すようにと指摘のあった部分以外は直さない

リジェクトされたら

どこかの大先生に論文を読んでもらったのだと思うこと.

効率のよい執筆作業

論文執筆のみに時間を費やすことを

・時間がもったいない
・新しい研究を進めなくてはと焦りを感じる
・自分は今,研究をしていない
こんな風に思っていないだろうか.
これらはいずれも,とんでもない勘違いだ.論文執筆は研究の重要部分であり,執筆に集中することは,研究完成に向けて時間を有効に使っていることである.

文献

練り上げた構想に従って論文を完成させるために必要な情報を引き出す.
「勉強」のために読むのではない.


感想

学部4年生で卒業研究をはじめた頃にもこの本を読んでいたのですが,修士過程を終え,論文投稿をいくつか経験した今になって読み直すと,あらためて勉強になりました.学部4年生の頃は,研究結果を文章にするということや,査読のプロセスなどについて,ほとんどイメージがわかず,いかにわかりやすい文章を書くかといった部分に注目しがちでした.しかし今,執筆や査読の部分を読んでみると,まったくその通りだとうなずいたり,ああそういうことかと納得するところがしばしばありました.
すでに読まれたことのある方も,もう一度読み返してみると,新たに得るところがあるかもしれません.


脚注

※1 記載内容は本から抜き書いた個人的なメモです (私のオリジナルな表現ではありません).また,本の主張を間違って抜き書いている恐れもあります.十分ご注意ください.

2011/10/08

最古のアシュール石器 (Acheulian)

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1ヶ月ほど前の『Nature』誌に,アシュール石器としては最古となる年代が決定された,という報告 [1] が載りました."Turkana tools"という文句と石器の写真が表紙になっていたので,目にされた方も多いかも.

以下のようなニュースも報道されています.


このエントリでは,この報告の概要と意義について書いてみます ※1

背景 [2]

アシュール石器 ※2とは何か?

人類進化のある段階であらわれた一連の石器群 (石器インダストリ) のひとつです.
石器インダストリは以下の4つに大きく分けられます.
・オルドワン (Oldowan)
・アシューリアン (Acheulian)
・ムステリアン (Mousterian)
・後期旧石器時代以降の「進歩的」な石器群

Australopithecus属からHomo属が進化してきた頃に現れた最初の石器がオルドワンです.260万-160万年前頃まで使われていた石器で,Homo habilis など最初期のHomo属が作成してたと考えられています ※3.「原始的」で,小石をぶつけあわせて鋭い縁をつくりだしたような石器とイメージしていただければ良いかもしれません.

オルドワンの次にあらわれるのがアシューリアンです.もとになる石から手頃な大きさの石を切り出し,その石を丁寧に加工して刃をつけていくことで作られます.アシューリアンになって初めて,こうした二次的な加工や,石器の両面に対する加工が施されるようになります ※4.今回の報告がなされる前までは,アシューリアンは140万-30万年前くらいまで,広義のHomo erectusによってつくられ使われていた,と考えられていました.

ムステリアンは,30万-3万年前くらいまで,Homo neanderthalensis (いわゆる「ネアンデルタール人」) によってつくられ使われていた石器です.亀の甲羅のような特徴的な形の石を生じるルヴァロワ技法 (Levallois technique)によって作られており,石器のほぼ全縁に鋭い刃ができるのが特徴です.

後期旧石器以降の「進歩的」な石器群は,Homo sapiens (私たちヒトのことです) によってつくられ,5万年前以前からみられるようになります.石刃とよばれる規格化された形の破片を切り出し,破片を二次的に加工していくことで実に多様な道具をつくりだします.
それ以前の石器インダストリには,地域や時代によってほとんどバリエーションがなかったのに対し (オルドワンやアシューリアンは100万年近く (!!) 同じような石器がつくられ続けていたのです),このインダストリでは,個別の用途に特殊化したさまざまな石器が各地でつくられるようになります.

人類の進化とアシュール石器

アフリカで進化した初期Homo属は,それまでの人類のうちで初めてアフリカの外に出ていきます (出アフリカ) ※5.この170万-140万年前頃,広義のHomo erectusの出現,アシューリアンの出現,出アフリカ,がほぼ同時期におこっていることから,より「進歩的」なHomo erectusが「進歩的」なアシュール石器を作成し利用して,初めてアフリカ外への拡散を果たしていった,という考えが一昔前まで広く受け入れられていました.

しかし近年,最初期に出アフリカを果たした人類はアシュール石器を持たなかった可能性が高いことが明らかになり [3, 4] ※6 ,上記の考えは再考を迫られていました.
そんななか,今回の研究が発表されました.


今回の報告

アシュール石器の最古の年代が約35万年古くなった

トゥルカナ盆地北西のKokiselei 4遺跡 (ケニア) から発見されたアシュール石器の年代が,約176万年前と推定されました.これまで最古と考えられてきたもの [5] ※7より35万年ほど古い年代です.
年代の決定は,古地磁気測定,層位学,アルゴン年代測定 (先行研究の結果を引用) によって行なわれています※8

オルドワン石器と共存していた

重要なのは,最古のアシュール石器の176万年前という年代が,オルドワン石器の存在していた最新の160万年前という年代とオーバーラップしている点です.この結果は,オルドワン石器からアシュール石器への相互排他的な一直線の発展,という一昔前まで受け入れられていた考えがもっともらしくないことを示唆します.
著者らは,この頃,異なる石器を作成する人類集団が複数同時に存在していた (生物種が異なるのかどうかまでは不明) と結論しています.

さらに,この研究の結果から,当時すでに「進歩的」なアシュール石器が存在していたにも関わらず,それを利用しない人類が最初期に出アフリカを果たした,という意外な実像も見えてきました.アシュール石器の発展により初期人類の出アフリカが初めて可能になった,という従来の仮説は,いよいよもっともらしくないものになってきたわけです.


まとめ

ケニアのトゥルカナ盆地北西の遺跡から発掘されたアシュール石器の年代が176万年前と推定されました.
今回の報告により,アシュール石器とより「原始的」なオルドワン石器の存在時期がオーバーラップしていたことが明らかになりました.
この結果により,オルドワン石器 → アシュール石器という相互排他的な進歩を仮定する考え方と,アシュール石器の発展により初期Homo属の出アフリカが初めて可能になったという仮説は,ますますの再考を迫られることになりそうです.


脚注

※1 論文紹介のゼミで紹介したため,ある程度は読み込みましたが,それでも間違いがあるかもしれません.もしありましたら,ご指摘いただけると幸いです.つくったスライドをそのままアップロードできると良いのですが…

※2 このエントリでは,「アシュール石器」「アシューリアン」「Acheulian」をほぼ同義に使っています.

※3 Homo属だけでなく,Australopithecus garhiなど後のほうのAustralopithecus属も,オルドワンの石器を作成していた,とする説もあるようです.

※4 できあがりの形をあらかじめ頭に描いていなければ,こうした二次加工はできず,したがって,これらの石器の出現は人類の認知能力がここで急激に発達したことを意味している,とする説もあります.

※5 2回目の出アフリカは,約8万-5万年前くらいにHomo sapiensによってなされます.多地域進化説 (1回目に出アフリカした初期人類が世界各地で現生人類に進化した) と,アフリカ単一起源説 (各地の現生人類は2回目に出アフリカしたHomo sapiensの直接の子孫である) のどちらが正しいか,人類学では長年議論がなされてきました.しかし,1990年代はじめ以降の一連の分子系統樹の研究などから,現在ではアフリカ単一起源説が正しいだろうとの見方が一般的になっています.

※6 グルジアのDmanisiで発見された175万年前の初期Homo属は,オルドワンの石器を伴っていました [2].インドネシアのJavaで発見された180万年前と推定された初期Homo属では,共伴する石器がみつかっていません [3].

※7 エチオピアのKonso-Gardula (KGA) 遺跡から発見されたアシュール石器が,アルゴン年代測定と層位学的な研究により,約140万年前のものと推定されています [4].

※8 トゥルカナ盆地のこのあたりには,数百万年間に堆積した地層が隆起して,数10-100m以上の露頭が見えているところがあるようです.石器の年代の決定は,1. 露頭に記録された特徴的なイベント (火山灰や地磁気の逆転など) の年代を決定し,2. 地層の高さとこの年代の関係を数式で表し,3. 石器の発掘された層の高さを数式に代入して年代を算出する,という方法で行なわれました.カバーしている年代は233万-148万年前で,対応する高さは0-247mです.なかなか美しい方法論と結果が出ているように思いましたので,興味のある方はぜひ論文 [1] をご覧になってみてください.


参考文献

[1] Reple CJ et al. 2011. An earlier origin for the Acheulian. Nature 477:82-85.
[2] Klein RG. 2009. The Human Career: Human Biological and Cultural Origins (Third edition). University Of Chicago Press.
[3] Gabunia L et al. 2011. Earliest Pleistocene hominid cranial remains from Dmanisi, Republic of Georgia: Taxonomy, geological setting, and age. Science 288:1019-1025.
[4] Swisher CC et al. 1994. Age of the earliest known hominids in Java, Indonesia. Science 263:1118-1121.
[5] Asfaw B et al. 1992. The earliest Acheulian from Konso-Gardula. Nature 360:732-735.

※ ほかにもありますが,ちょっと絞ってみました.