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2012/11/06

AAASエディター講演会

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先週学内で開かれたAAASエディターさんによる特別講演会のまとめ.
面白いなと思ったところだけまとめてみました.

オープンアクセス誌の収益モデルはScience誌には合わない,という明確な立場.

文献やデータは出版と同時に利用可能になってきている → in prep などは無し.
Data not shown ではなくSupporting Materialsで示す.

Editorによってリジェクトされる主な理由.
  • 幅広い分野から興味を持たれる一般性がない
  • 仕事量が不十分
  • もっともおもしろい部分が推論に基づいている

うまくいった研究者のように考える.
  • 2つの分野の融合領域ではたらいている
  • 古くからある難しい問題に新しい技術を適用する
  • 予期せぬ結果を突き詰める

カバーレターは,Editorに直接的に話しかけられるチャンスである.

アカデミックカレンダーにあわせて,1年周期できれいに,原稿投稿数が変動している.

2012/08/05

スゴ本オフ「ホラーの会」

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スゴ本オフ「ホラーの会」に参加できず,ちょっと悔しいので,紹介予定だった本をここに書いてみます.
ただし,ホラー然としたホラーは読んだことがないので,ちょっとはずれた感じのチョイスになりました.

まずは,ル・グウィンの『ゲド戦記 こわれた腕環』とトールキンの『指輪物語』.どちらもファンタジーの名作ですね.
これらは中-高校生のときに読んでいて,闇の描写が実に生き生きとしていたのが印象に残っていました.当時は,描かれている闇がまるで生きているように思えて,闇のもつぼやけた意志のようなものが,主人公たちの心を圧迫していく様子におそろしさを感じたのを,鮮明に覚えています.
しかし今あらためて読みかえしてみると,残念なことに,当時感じたようなぬめぬめした闇の質感はよみがえってきませんでした.うむむ….ほかにも,ゲド戦記に関しては,ジェンダーとか仕事とか,そういう当時はあまり意識しなかった観点からも物語を読んでいることに気づきました.久々に好きな本を読み返してみるのも,おもしろいものですね.


次は内田百間の『冥土』と『東京日記』.ちなみに,百間の本は全般的に大好きです.
さて,これらは特に,日常がふと異界につながるさまを描いた不思議な作品群です.どちらも短編が収められ,後者に関しては,東京の馴染みある場所が舞台になっている分,不思議な印象がいや増しています.夏目漱石の『夢十夜』とテイストの似たところがありますが,『冥土』や『東京日記』には,百間のこだわりというか,普通であれば言葉を尽くさなければ伝わらない個人的な執着のようなものが,さらっと著されているように思います.このにじみ出るこだわり・執着の強さが,百間の文章の魅力であり,飲み込みづらさであると私は思っています.もうひとつ,他人から自分がどう見えるか,という点に関する不安を,百間は実にうまく表現する作家であるようにも思います.


最後は鈴木尚の『日本人の骨』.著者は著名な形質人類学者です.
鎌倉の海水浴場のすぐ近くに,鎌倉時代の大量の人骨が埋まっていた (埋まっている) ことを,また,東京都心のいろいろな土地から,さまざまな時代の人骨が今も出土することを,ご存知でしたでしょうか?この本は,そうしたさまざまな人骨の形や時代から,どのような研究がなされてきたかを,わかりやすく紹介しています.紹介されている人骨は,ものによっては刀創のある個体であったりしますが,ホラーではないかもしれません…そうですね,骨の話です.


こんなところで紹介を終わりますが,ホラーと言って怖いのは,闇とか異界とか骨そのものではなくて,その奥にある,人の,尋常でない意志なのかもしれませんね.恨みとか,怨念とか,そういうものを,物理的な対象に意味づけてしまうのが,ヒトという生き物の性なのでしょうか.

2012/06/23

角川文庫さんシバリのスゴ本オフ

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角川文庫さんシバリのスゴ本オフ」にて紹介する予定の本.
どれも抽象的な説明になってしまったなあ…

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仰臥漫録 正岡 子規

解説のなかで嵐山光三郎は
子規はわれらにむかって吠え,泣き叫び,激しく,人間の根源を問いかける.
と書いているけれど,私はそうは思わない.

たしかに,子規の病状は絶望的で,寝起きや排泄も自分の思いどおりにならず,しばしば猛烈な肉体的・精神的苦痛が彼を襲う.病人とは思えぬ量の食事をとり,腹を下し,看病している母や妹に癇癪をおこして後悔する.

それでも,私はどうしても,全体からあふれでる妙なユーモアを感じてしまう.

便通
牛乳ココア入 ねじパン形菓子パン半分程食う 堅くてうまからず よってやけ糞になって羊羹菓子パン塩煎餅など食い渋茶を呑む あと苦し

p. 52

一両日来左下横腹 (腸骨か) のところいつもより痛み強くなりし故ほーたい取替のときちょっと見るに真黒になりて腐り居るようなり 定めてまた穴のあくことならんと思わる 捨てはてたからだどーなろうとも構わぬことなれどもまた穴があくかと思えば余りいい心持はせず このこと気にかかりながら午飯を食いしに飯もいつもの如くうまからず 食いながら時々涙ぐむ

p. 98

食にぶつけるほか逃がしようのないストレスや,崩れてゆく自分の体にショックを受ける子規の姿がある.だけれども,自分の悲しみに入れ込んでいたり,壮絶な戦いのさなかにある人間は,こんな文章を書けないんじゃないかと私は思う.ときどき挟まる絵を見ていても,そう思う.

子規は,そこにいるのだけれど,いないのだ.
たとえ聞く者が自分しかいないとわかっていても,どんなに心が落ち込む状況にあっても,人が自分を見る目には,どうしてもユーモアが混じるものなのかもしれない.


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子規が生きていた明治の頃の食べ物は,現代に見られるものと概ね同じだった.
では,時代をさかのぼって,江戸時代はどうだろうか?中世は?縄文時代は?…そんな疑問が湧いたとして,それに答えてくれるのが次の本.

日本人はなにを食べてきたか 原田信男

著者は文献史の研究者で,縄文時代から現代にいたるまでの食の変化を,実証的かつ丹念にたどっている.

日本に農耕が導入されて以来たった2-3千年のあいだにどれほど食文化が変化したか,仏教的な背景をもつ肉食禁忌の実体,「遊び」としての食が普及した江戸時代,など,知っているようで知らなかった食の歴史が著されている.

そして,食は食だけに完結していないのが,この本を読むと理解される.
社会,文化,経済的な背景から食は大きな影響を受け,またそれらに大きな影響を与えてきた.そんなことがよくわかる一冊.


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前の本が,食の「歴史」という縦の糸に着目した作品なら,次の本は,特に肉食の「多様性」という横の糸に着目した作品.

世界屠畜紀行 内澤 旬子

日常的に食べている肉が「肉になるまで」を世界各地で追ったルポルタージュで,もちろん日本の芝浦屠場についても,丹念に取材し現場に入り込んで,文章が書いてある.

著者は,屠畜の現場を追っているのだけれども,視線は表面をなぞるにとどまらない.屠畜という行為がどのように見られているか,どのような文化的・経済的・歴史的背景で行なわれているか,そしてそれはなぜなのか.

ときに現象のうすっぺらな記述に終わりがちなルポルタージュだけれども,著者は,曇りのない視線で,現象に説明をつけることを試みる.説明がうまくいっているのは,現地の人と楽に打ち解けてしまう彼女の人間的魅力に負っているところが多いんだろうなと,そんなことを感じたりする.

韓国でもバリ島でもエジプトでもチェコでも日本でも,動物を殺すという「かわいそうなこと」が,実にいきいきと行なわれている.肉食という生活にもっとも近い行為のひとつの裏に,どんな人々がいて,何をしているか,きっと知っておいて損はない.

日本で見られる (見られた) ような,「屠殺」にまつわるネガティブなイメージやそれに携わる人々への差別が,世界では必ずしも一般的でないことも,付記に値する.このようなイメージや差別がどのように形成されてきたか,『日本人はなにを食べてきたか』の記述を参考に考えてみるのも良いかもしれない.

最後に,随所にはさまるイラストが素敵なのと,沖縄のヤギ肉料理はぜひとも食べてみたいものです,という感想を述べておきましょう…


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「角川文庫」と聞いてどうしても紹介したかった本.

日本の人類学 寺田和夫

日本における人類学 (自然人類,文化人類,そして考古学) がどのように発展し,そして細分化してきたか,史実にもとづいて丁寧に追っている.

日本の人類学の祖 坪井正五郎,最終学歴が小学校中退の東大助教授 鳥居龍蔵,星新一の祖父 小金井良精,異常なまでの収集癖をもっていた清野謙次,出版という方面から学問の発展に寄与した岡茂雄…実に多様で癖のある人々が,いかにひとつの (いくつもの) 学問体系をつくりあげていったか,それが手に取るようにわかる.

私は自然人類学を専攻しているので,この本に書いてあることが,血肉になるように吸い込まれていった.他の人が読んだときも同じように楽しめるかはわからないのだけれど,自分の専攻する分野の学史を知っておくことは非常にためになると思う.

どのような学術課題が当時提示されていたか,どのような社会的背景があってその分野が誕生したか,当時と現在とでどの程度手法が変わったか…巨人の肩の上にのって学問をしているという事実が,これほど理解されることも多くはない.

最後に,ひとつ気になったのが,女性研究者の名前が,ひとつも出てこなかったこと.第二次世界大戦終戦の時期でこの本は終わるのだけれど,それまで女性が研究に携わることがいかに困難だったかということと,今なおその状況は解決されていないということに,なんとも釈然としない気持ちを抱いている.

2011/10/19

Rの勉強会 Kashiwa.R を開催します

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東京大学柏キャンパスでRの勉強会 Kashiwa.R を開催します.

概要

上級者から初心者まで,Rや統計解析に興味をもった人たちが,お互いの知識を交換しあって勉強できる会にしたいと考えています.発表者も募集してます!

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2011年11月11日 (金)
17:30-19:30
東京大学柏キャンパス 柏図書館 セミナー室2
終了後,食堂または総合研究棟で懇親会
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詳細はKashiwa.RのWikiをご覧ください.


動機

統計解析やRについて,いろいろな知識を吸収して視野を広げたいなと思ったのが,はじめの動機です.

数理統計解析やRには,実にさまざまな手法があり,使い方があります.
そして,ある分野では当たり前のように使われている手法やtipsが,実は他の分野では知られておらず,大きなbreak-throughを生み出す可能性を秘めているようなことは,往々にして起こり得ます.
しかし,それぞれの専門が高度になり細分化した現在,異なる分野の手法を個人ひとりの力で幅広く勉強するのはなかなか大変です.

そこで,誰もが気軽に参加して発表もできる勉強会があったらいいなと思ったわけです.
それぞれの知識や勉強したことをシェアして,研究や仕事でデータを解析する際に役立てられればいいなと考えています.

Rの勉強会としては,Tokyo.RTsukuba.Rなども開催されていますが,開催場所が (柏からだと) やや遠いのが難点です.
Kashiwa.Rとして,柏キャンパスやその周辺で勉強会を開催することで,
  • 近場で気軽に参加できる
  • 発表や意見交換を通じて,内外の学生・研究者の交流にもつながるかも
という利点・効果が期待できます.

というわけで,開催してみることにしました!


いろいろ

発表者・参加者募集中です!
どんなに「つまらない」ことでも結構です (前述のように,他の分野においてはそうではないかもしれませんし).
何かネタのある方は,ぜひ,MLWiki@tsutatsutaまでご連絡ください.
当日飛び入りも歓迎ですが,Wikiに出欠などを書いてくださるとうれしいです.

また,勉強会は,柏キャンパスの学生・研究者の学術交流を目指しているAcafeとの共催です.次回のAcafe開催は未定ですが,興味がありましたら,こちらのほうにもぜひご参加ください!

2011/07/27

消えゆく学会

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7月23日に開催された 消えゆく学会 の個人的なメモ書きです.
講演内容とニュアンスや内容が異なる恐れがあります.参照される場合は以下のような他の情報源もかならずご確認ください.

Togetter - 「消えゆく学会 〜問い直される学会の役割と社会との関係性〜」

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武田英明さん(国立情報研)
■「所属学会」が自己紹介になる.(専門性の表現,アイデンティティ)
■学会の歴史としては,科学者のコミュニティと技術者の寄り合いがある.
■科学者の社会貢献の二面性
・科学者としての中立的な助言
・学会(社会に対する科学の代弁者)構成員としての合意した科学者の声
■世界の動向
・ジャーナル:ブランド化(寡占化),オープンアクセス(情報はフリーに).
・カンファレンス:増える傾向,囲い込みもおこる.
■役割の分化
・社会的責任を果たす学会.
・同好会学会.

コメント
■学会への企業の参加が少なくなっている = リターンが少なくなっている,ということではないか.


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神嶌敏弘さん(産総研)
■Web上の学術情報
・ACM Digital Library
・Project Euclid
・寡占化のメジャープレーヤー:Springer,Elsevier,
・プレプリントサーバ
・書誌情報DB(Google Scholarなど)
・会議のIFを計算するMicrosoft Academic Search
・会議の発表をストリーミング(videolectures.net)
・会議案内を掲載するWikiCFP
・Scholarpedia:招待された専門家が記名で編集するWiki辞書
・国際会議の運営を簡単にしたシステム(Easy Chairなど)
・Tewitterはまだ発展途上(アナウンス程度,ビッグネームはやってない,議論してるのとか見たことない).
・Blogは熱心にやられてたりする.
・機会学習の分野では,MLJのEditorial Boardから有力研究者が大量辞職(読むのが有料,掲載まで遅い,など文句があったため).かわりに無料オンライン誌JMLRの創刊.
・Peer Review の公平性,負担軽減
・Webが発展しても,概念としては固まっているが言葉としてあらわせないようなものは検索できない.そうした情報を得るのは,学会や論文が最適なのではないか.


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木村忠正さん(東京大学)
■disciplineとassociationからとらえる
・disciplin:探求の過程.
・association:人々を横につないで補完する場・機会.
■日本社会情報学会はふたつある(しかも登録日が同じ)
■制度科学:"まさに「科」にわかれた「学」"
■現状の問題:Multiversity
■生産するときは組織が活発,交換するときは市場が活発.
■disciplineが何かはdisciplineが再帰的に定義していく.
■組織というローカルが意味をもっていた社会が変化してきた.

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植田憲一さん(電通大)
■アメリカの学会は,いかに世界制覇していくかを考えている.
■「公益」の考え方が米国と日本でだいぶ違う.あちらでは,学会が利益を出すのは当然.こちらでは,儲けてはいけません.学問をやっているということ自体で社会に貢献するべき.それ以外はプラスアルファ.
■学会で「これは言えません」は良いのか?
■日本の学会は世界でもっとも組織され,社会に開かれた存在として社会に貢献してきた(博士号をもたない学生が発表をするのは日本くらい).
■一般社会は,悪貨が良貨を駆逐する.しかしピアレビューは.良貨が悪貨を駆逐する.
■これがテーマだ,と選択した時点で研究の価値が決まる.あとは結果を伝えるだけ.


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山川宏さん(富士通)
■研究環境の変化:Gibbonsのモード論,ZinmanのCudosからPlaceへ,ポストアカデミック科学.


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パネルディスカッション
■学会の生産物のうち最も価値のあるものは人材.そしてそれはなくなって初めて理解される.
■Journalの価値は評価すること.評価したものを回すのは別な部分に任すのが良いのでは?
■自分は人類の知を代表している.レフェリーが認めないなら,それは人類の知に反しているとして戦わないといけない.
■研究者の価値をきちんと測れる仕組みはウワサ.しかし日本の問題は,論文発表数などの定量性をひっくり返せないこと.
■結局,研究者が何を選び取りたいのかが重要ではないか.

2011/05/24

子育てにはコストがかかる

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先日,「治部れんげ氏講演会 共に歩む未来のために 〜男性研究者・学生のための共同参画〜」に参加してきました.

講演のことは,

共に歩む未来のために 〜治部れんげさん講演会。盛会でした。(けやきのき)」

イクメンを目指す男子向けの講演@東大に行ってきたよ 〜治部れんげさん「男性のワークライフバランス」〜(kobeniの日記)」

フェアな人ほど大変?~治部れんげさん 講演会(外資系IT企業につとめる男性社員の育休日記!)」

などにまとまっていますので,ここでは特に私の印象に残ったことを書いてみようかと思います.


それは,子育てにはとてもコストがかかる,ということ.


実際に子育てをされている方からしてみればあまりにも当然のことなのかもしれませんが,今回の講演でそのことがある程度理解できたように思います.
男性または女性とそのパートナーが一緒に暮らしているだけなら,行動の自由度もそれなりにありますし,出費や必要な住空間もふたり分で済みます.しかし,そこに子育てが加わると,まず,いちばんの弱者である子供に生活リズムや行動をあわせる必要があり,また,子どもが増えるほどお金や空間もたくさん必要になってきます.そして,子どもの生活リズムと相容れないペースで動いている社会と交渉し,柔軟に子育てと生活を続けていくためのコストが生じます.

このコストはやはりとても大きなものなんだなあというのが講演を聞いての印象です.それがゆえに,講演で話があった以下のようなことが起きるんだろうと思いました.

・妻に対してフェアな(家事や育児のコストを妻とシェアする)男性は,まったく家事をせず仕事により多くの時間を割く男性との社会的な競争において不利になる.

・「女性にやさしい」と言うことと,実際に自分のパートナーに対してそのように行動することは,フィギュアスケートを見るのとやるのくらい違う.


ほかにもいろいろ得るところの多い講演会でした.
・"配慮"よりも公正な処遇を.
・能力がある人は個別交渉で勝ち取ることができるが….
・子育ては,生物学的には生産なのに対し,現代の資本主義社会においては消費であり,齟齬が生じている.
などなど.


霊長類のなかでもヒトは特にユニークな生活史をもっており,そのような性質がなぜどのように進化してきたかは,人類学においても古くから注目されてきたテーマのひとつです.この性質と現代社会の生活環境のあいだにどのような齟齬が生じているのか,もっと具体的に知ることができたらおもしろいなと,そんなことを考えたりもしました.