スゴ本オフ「ホラーの会」に参加できず,ちょっと悔しいので,紹介予定だった本をここに書いてみます.
ただし,ホラー然としたホラーは読んだことがないので,ちょっとはずれた感じのチョイスになりました.
まずは,ル・グウィンの『ゲド戦記 こわれた腕環』とトールキンの『指輪物語』.どちらもファンタジーの名作ですね.
これらは中-高校生のときに読んでいて,闇の描写が実に生き生きとしていたのが印象に残っていました.当時は,描かれている闇がまるで生きているように思えて,闇のもつぼやけた意志のようなものが,主人公たちの心を圧迫していく様子におそろしさを感じたのを,鮮明に覚えています.
しかし今あらためて読みかえしてみると,残念なことに,当時感じたようなぬめぬめした闇の質感はよみがえってきませんでした.うむむ….ほかにも,ゲド戦記に関しては,ジェンダーとか仕事とか,そういう当時はあまり意識しなかった観点からも物語を読んでいることに気づきました.久々に好きな本を読み返してみるのも,おもしろいものですね.
次は内田百間の『冥土』と『東京日記』.ちなみに,百間の本は全般的に大好きです.
さて,これらは特に,日常がふと異界につながるさまを描いた不思議な作品群です.どちらも短編が収められ,後者に関しては,東京の馴染みある場所が舞台になっている分,不思議な印象がいや増しています.夏目漱石の『夢十夜』とテイストの似たところがありますが,『冥土』や『東京日記』には,百間のこだわりというか,普通であれば言葉を尽くさなければ伝わらない個人的な執着のようなものが,さらっと著されているように思います.このにじみ出るこだわり・執着の強さが,百間の文章の魅力であり,飲み込みづらさであると私は思っています.もうひとつ,他人から自分がどう見えるか,という点に関する不安を,百間は実にうまく表現する作家であるようにも思います.
最後は鈴木尚の『日本人の骨』.著者は著名な形質人類学者です.
鎌倉の海水浴場のすぐ近くに,鎌倉時代の大量の人骨が埋まっていた (埋まっている) ことを,また,東京都心のいろいろな土地から,さまざまな時代の人骨が今も出土することを,ご存知でしたでしょうか?この本は,そうしたさまざまな人骨の形や時代から,どのような研究がなされてきたかを,わかりやすく紹介しています.紹介されている人骨は,ものによっては刀創のある個体であったりしますが,ホラーではないかもしれません…そうですね,骨の話です.
こんなところで紹介を終わりますが,ホラーと言って怖いのは,闇とか異界とか骨そのものではなくて,その奥にある,人の,尋常でない意志なのかもしれませんね.恨みとか,怨念とか,そういうものを,物理的な対象に意味づけてしまうのが,ヒトという生き物の性なのでしょうか.
2012/08/05
2012/06/10
訓練としての人生
一方で自分という一貫性を守り,一方で自分にとって正しい方向に型を破っていけるように,人生の一瞬一瞬に責任をもちたいものです,という話.
左近司祥子さんの書かれた『本当に生きるための哲学』 (岩波書店, 2004年) を読んで,まとめというか,思っていたことというか,そんなことを書いてみる.
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一瞬の判断が,良くも悪くも人生を変えることがある.
しかし,人生とはそもそも一瞬の連なる連続体であり,どこかの一瞬を大事にしようとするなら,その他のいずれの一瞬をも大事にしなければならない.
変わるのは人生ほど大きいものではないかもしれないし,変わったことに気づかないかもしれないけれど,ある一瞬の判断は,それ以前の判断の集積から影響を受けていて,いま何かを変えて,またその後の判断に影響を与える.
だから,普段の日々の一瞬一瞬をそのように訓練しておかなければ,ある特定の一瞬に,自分にとって正しい判断をくだすことが難しくなる.その特定の一瞬を成功させるためには,普段から一貫して「自分である」ように準備と蓄積をつづけておかなければならない.
----
しかし,人間にはそんなに単純でないところもあって,その特定の一瞬に,それまでの準備をすべて反故にするほど力強いひらめきが生じることがある.このひらめきによって,あるときには飛躍的に幸せに,あるときには飛躍的に不幸にもなる.
このひらめきは「自分ではないが自分である」もので,飛躍した先を自分にとって正しいものにしておくためには,やはり普段の一瞬の判断の連続体に厚みをもたせておくことが肝要である.
だから,自分の人生を自分として生き,それでも自分の枠を超えつづけるために,訓練としての人生を進めていきたいものです,ということ.
しかし,この一貫性を守っていくのはそう簡単ではなくて,それだから,人類はこれを守るためのありとあらゆる方法を,知恵をしぼって考えてきたのかもしれない.
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最後に本からの抜き書きを.
左近司祥子さんの書かれた『本当に生きるための哲学』 (岩波書店, 2004年) を読んで,まとめというか,思っていたことというか,そんなことを書いてみる.
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一瞬の判断が,良くも悪くも人生を変えることがある.
しかし,人生とはそもそも一瞬の連なる連続体であり,どこかの一瞬を大事にしようとするなら,その他のいずれの一瞬をも大事にしなければならない.
変わるのは人生ほど大きいものではないかもしれないし,変わったことに気づかないかもしれないけれど,ある一瞬の判断は,それ以前の判断の集積から影響を受けていて,いま何かを変えて,またその後の判断に影響を与える.
だから,普段の日々の一瞬一瞬をそのように訓練しておかなければ,ある特定の一瞬に,自分にとって正しい判断をくだすことが難しくなる.その特定の一瞬を成功させるためには,普段から一貫して「自分である」ように準備と蓄積をつづけておかなければならない.
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しかし,人間にはそんなに単純でないところもあって,その特定の一瞬に,それまでの準備をすべて反故にするほど力強いひらめきが生じることがある.このひらめきによって,あるときには飛躍的に幸せに,あるときには飛躍的に不幸にもなる.
このひらめきは「自分ではないが自分である」もので,飛躍した先を自分にとって正しいものにしておくためには,やはり普段の一瞬の判断の連続体に厚みをもたせておくことが肝要である.
だから,自分の人生を自分として生き,それでも自分の枠を超えつづけるために,訓練としての人生を進めていきたいものです,ということ.
しかし,この一貫性を守っていくのはそう簡単ではなくて,それだから,人類はこれを守るためのありとあらゆる方法を,知恵をしぼって考えてきたのかもしれない.
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最後に本からの抜き書きを.
というのはこの瞬間の断というのも次の瞬間の断のための集積の一つになっていくということです.
そういう生き方を私たちはしているわけですし,するしかないのです.そうだとすれば,この瞬間の断のために,そして今後必要となる新しい断のためにも,正しい断をこの瞬間に下せるように訓練をしておく必要が出てくるのです.広い意味での訓練です.
連続する私に,突然割り込んできた飛躍した私,それぞれについての,いろいろな考察はあとのことです.あとでゆっくりすればいいのですし,するべきです.そして,実際私たちはそうしています.
2012/04/22
ラボ・ダイナミクス
図書館でたまたま手にとった『 ラボ・ダイナミクス -理系人間のためのコミュニケーションスキル 』という本がとても良かったので,その抜き書きというかまとめというか ※1.研究室の人間関係について悩んでいた場合,たくさんヒントが得られると思う.
書評に関しては以下にまとまっている.
これぞ大学院生必携、『研究室の人間関係学』 - 赤の女王とお茶を
自己認識を深める ※2
1. 自分の感情を「知る」思考を表す言葉 (e.g. と感じた,勝ちたい,決断する) ではなく,感情を表す言葉 (不安だ,おびえている,もどかしい) で,自分を表現してみる.名前をつけなければ理解することはできない.
2. その感情が行動に及ぼす影響を「予測する」
自分が1のような感情を抱いたときにどのような行動にでるか,最初に思いついた行動について考えてみる.
3. 状況にふさわしい行動を「決断する」
人に害をなすか,その状況にふさわしいか,プロの行動といえるか,我をもって対処していないか,にひとつでも引っかかれば,見直すべきである.
自己認識を深めるトレーニング
日々のなかでタイムアウトをとり,そのときの感情を分析してみる.ほんの少しでもいいから,感情に名前をつけて,記録してみる.不快な感情が予測される状況 (e.g. つまらないゼミ,緊迫した話し合い) で特に.また,「心の地雷」のありかを探り,どのような状況でそれが踏まれてしまうのかを分析する.次にそのような状況に出会ったら,トイレに行くでも携帯電話を見るふりをするでも,とにかく時間稼ぎをして,その状況から心理的距離をおいて分析する.
交渉
立場の正当性ではなく,その背後にある双方の利益を念頭において交渉する.利益とは,あなたが交渉により最終的に手に入れたがっているものである.立場とは,あなたが利益を手にする手段のひとつにすぎない (e.g. 立場: ファーストオーサーになりたい,利益: 就職できる).立場は認めるか認めないかのどちらかしかないが,利益を満たす方法はいくらでもある.交渉においては,パイをふくらませること (話し合いの要素を増やすこと) が重要.問題をそぎ落として,核心をできるだけ単純化してから,鍵となる単一の要素について検討するサイエンスのやり方とは正反対で,非生産的にみえるかもしれないけれど.
注
※1 書籍を購入してしまったのもあって,ここに記した以降はまとめていない.※2 参考: 「怒らない」ということ
2012/03/31
専門性の向かう先を少しずらす
『日本の食と酒 -中世末の発酵技術を中心に』 (吉田元. 1991. 人文書院) という本を読んで,あとがきが興味深かったので,一部を転載します.
博士号修得後 (博士号に限りませんが),身につけた専門性をもとに,どういった道を切り拓いていくか,有用なヒントがあるように思いました.どの分野にせよ,新たなものを創りだす過程には苦労があり,努力も必要になるでしょうけれど,専門性の向かう先を少しずらすという選択肢を選びとることも,ときには良い結果につながるのかもしれません.
緑美しい舞鶴湾に面した水産学科の学舎を巣立ってから,大学院,米国でのポスドク生活を含めた10余年間,食糧科学研究所,医学部生化学科,農学部農芸化学科と,仕事場所は次々にかわったが,著者はずっと各種微生物酵素の精製,応用研究を続けていた.著者は吉田元先生.農学で博士をとられ,現在の専門は科学社会学・科学技術史および農芸化学とあります.
しかし赴任先の小さな文科系の大学 ※1 には実験室すらなく,ここで自然科学史を講義することになった.実験室なき実験屋としてはしばらくは茫然とし,以後の研究をどう進めるべきか大いに悩んだのであるが,科学技術史を選び,それまで学んだ応用微生物学と仏教寺院とをつなぐテーマがないかと探し続けた.
日本酒の火入れ殺菌が,世界に先駆けて16世紀に奈良興福寺の一塔頭で実施されていたことを知ったのは,その頃たまたま手にした坂口謹一郎先生の名著『日本の酒』によってである.日本における火入れ殺菌法の起源を求めた本書の第六章が著者の研究の再スタートとなったわけであるが,最初に出会った史料があらゆる研究の宝庫とも言うべき『多聞院日記』だったことは大変幸運なことだったと思っている.この日記は寺院の作業日誌的性格も有していて,中世から近世にかけての諸日記の中でこれだけ発酵食品の製造法を定量的に解析出来るものは他には見当たらない.本日記により酒だけでなく,現在の醤油の原型についてもかなりはっきりとした像が見えて来たように思う.
博士号修得後 (博士号に限りませんが),身につけた専門性をもとに,どういった道を切り拓いていくか,有用なヒントがあるように思いました.どの分野にせよ,新たなものを創りだす過程には苦労があり,努力も必要になるでしょうけれど,専門性の向かう先を少しずらすという選択肢を選びとることも,ときには良い結果につながるのかもしれません.
注
※1 種智院大学仏教学部2011/11/19
ルーティンな生活 (あるいは 収束と発散)
内田樹さんの『最終講義 -生き残るための六講』という本に,以下のような文章がありました.
これまでなんとなく感じてきたリズムみたいなものが,うまく文章化されているような気がしました.
私自身も,自分の生活をルーティンに保っていないと,うまい具合にパフォーマンスをあげられないことが多いように思います.それは,食べるものであったり,朝起きる時刻であったりします.
お昼においしいものを食べに行ったり,プライベートで人とゆっくり話をしたり,そういう贅沢をすると,なんだか心が落ち着かなくて,ふわふわしているうちに一日が終わってしまう,そんなことがよくあります.また,特に睡眠時間は重要で,明確に緊急な要件でもない限り,睡眠時間が足りなかった日は,ほとんど集中できずに時間が流れていきます.
でも,決して,それらの「非ルーティン」なことが必要ないと言ってるわけではないですし,それらがあったほうが,より一層わくわくどきどきできるようなときもあります.
この違い,どこから来るのかと考えて,自分自身のリズムとの対応が重要なのかなと思いました.
何かの目的を達成しようとしていたとして,最初インプットを重ねているとき,意識が内側に向けて収束しているような感じになります.この段階ではたいてい,生活がルーティンなほうが効率が良い.
しかし,ある程度たまってきたインプットをアウトプットに変換していくときや,いちばん最初にそもそもどういう目的を設定するか考えるようなとき,意識が外に向かって発散していくような感じになります.この段階では,「非ルーティン」によってリズムが撹乱されると,かえって面白い結果を出せるようになることがある.
本には,以下のような文章もありました.
私にとっての「高いレベル」が本当に高いレベルなのかは定かではありませんが,こちらもなんとなくわかるような気がしました.
ごくまれに訪れてくる「アカデミック・ハイ」のわくわくどきどきした状態のためなら,「変化のない生活」も別に苦ではなくて.いや,苦とかそういうものではなくて,プロセスの一部である,とそんなことを思うのでした.
僕がルーティン大好き人間であるのは,ルーティンそのものが好きだからじゃないんです.そうじゃなくて,ルーティンを守って暮らしていないと,絶対に「アカデミック・ハイ」は訪れてこないということがわかっているからなんです.
これまでなんとなく感じてきたリズムみたいなものが,うまく文章化されているような気がしました.
私自身も,自分の生活をルーティンに保っていないと,うまい具合にパフォーマンスをあげられないことが多いように思います.それは,食べるものであったり,朝起きる時刻であったりします.
お昼においしいものを食べに行ったり,プライベートで人とゆっくり話をしたり,そういう贅沢をすると,なんだか心が落ち着かなくて,ふわふわしているうちに一日が終わってしまう,そんなことがよくあります.また,特に睡眠時間は重要で,明確に緊急な要件でもない限り,睡眠時間が足りなかった日は,ほとんど集中できずに時間が流れていきます.
でも,決して,それらの「非ルーティン」なことが必要ないと言ってるわけではないですし,それらがあったほうが,より一層わくわくどきどきできるようなときもあります.
この違い,どこから来るのかと考えて,自分自身のリズムとの対応が重要なのかなと思いました.
何かの目的を達成しようとしていたとして,最初インプットを重ねているとき,意識が内側に向けて収束しているような感じになります.この段階ではたいてい,生活がルーティンなほうが効率が良い.
しかし,ある程度たまってきたインプットをアウトプットに変換していくときや,いちばん最初にそもそもどういう目的を設定するか考えるようなとき,意識が外に向かって発散していくような感じになります.この段階では,「非ルーティン」によってリズムが撹乱されると,かえって面白い結果を出せるようになることがある.
本には,以下のような文章もありました.
自分の知性が最高の状態にないことに,空腹や眠気や渇きと同じような激しい欠落感を覚える人間だけが,知性を高いレベルに維持できる.
私にとっての「高いレベル」が本当に高いレベルなのかは定かではありませんが,こちらもなんとなくわかるような気がしました.
ごくまれに訪れてくる「アカデミック・ハイ」のわくわくどきどきした状態のためなら,「変化のない生活」も別に苦ではなくて.いや,苦とかそういうものではなくて,プロセスの一部である,とそんなことを思うのでした.
2011/11/01
やるべきことが見えてくる 研究者の仕事術
『やるべきことが見えてくる 研究者の仕事術』 (島岡要, 2009年, 羊土社) を読んでの感想です.
全体の印象については,以下のようなエントリに (私の感想が蛇足にしかならないほど) 非常に的確にまとめられているので,ここでは印象に残った部分の抜き書きを.
プロフェッショナル根性論 - 書評 - 研究者の仕事術 (404 Blog Not Found)
研究者の仕事術 - 「いかに働き、いかに生きるか」 (Leo's Chronicle)
やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論 (発声練習)
とにかく素晴らしい本です.
全体の印象については,以下のようなエントリに (私の感想が蛇足にしかならないほど) 非常に的確にまとめられているので,ここでは印象に残った部分の抜き書きを.
プロフェッショナル根性論 - 書評 - 研究者の仕事術 (404 Blog Not Found)
研究者の仕事術 - 「いかに働き、いかに生きるか」 (Leo's Chronicle)
やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論 (発声練習)
「好き」よりも「得意」にこだわる
專門バカに陥らないようにするために大切なことは,専門領域以外の知識を深めることではなく,自分の専門性を深める過程で普遍性を見失わないことなのです.
時間管理
あなたが成し遂げた10の業績のうち上位2つが,あなたの評価の8割を決める (ブライアン・トレーシー).
たとえ困難でも最も重要な仕事に最初に取りかかるべきです.そうすればたとえ時間切れになっても達成できずに残るものは重要度の低いものであるはずなので,あなたのトータルな評価に対するダメージは,重要度が高い事柄ができなかった時に比べずっと小さいはずです.逆に手がつけ易いという理由で簡単でも重要度の低い案件から始めるというのは,最も重要な案件にかける時間を失ってしまう可能性が大きく,対費用効果の点からはおろかな選択ということになります.
重要であるが緊急でないことをできるか?
成功している企業では時間の65%を領域-Ⅱに充てている領域Ⅱ: 重要だが緊急でないこと
建設的なフィードバックの与え方
オピニオン (意見/コメント) ではなくアナリシス (査読と評価) を.
創造性とは
創造性とは誰もできないような斬新な考え方をする,他人とは質的に異なる「ユニークな能力」ではなく,必然的に起ころうとしている発見を誰よりも早くつかみ取る「効率のよさ」のこと (ロバート・K. メルトン).
変化に対する苦痛・恐怖
John McCain 勇気とは恐怖を感じないということではない.勇気とは恐怖を目の前にしてなお行動できることだ (Courage is not the absence of fear, but the capacity to act despite fears.)
おすすめのTED
- Alisa Miller: Why we know less than ever about the world
- Brian Greene: The universe on a string
- Al Gore: New thinking on the climate crisis
- Paul Rothemund: Casting spells with DNA
とにかく素晴らしい本です.
2011/10/29
StrengthsFinder (ストレングス・ファインダー)
1年半くらい前にやったStrengthsFinder (ストレングス・ファインダー)のメモをたまたま見返す機会があったので,ちょっと転載してみます.
ストレングス・ファインダーとは,『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう あなたの5つの強みを見出し、活かす』という本にある,自分の強みをみつける分析ツールみたいなものです (専用IDが必要).書名はなんだか胡散臭いですが,内容は悪くなかったと記憶しています.
以下,私の結果です.
1. 着想
2. 戦略性
3. 社交性
4. 最上志向
5. 親密性
言われてみれば確かにそうかもしれないと思うところもしばしばでした (バーナム効果かもしれませんが).自分の弱みを自覚している人は少なく,強みを理解している人はもっと少ない,という言葉をどこかで聞いたことがありますが,そういうものなのかもしれませんね.
ストレングス・ファインダーとは,『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう あなたの5つの強みを見出し、活かす』という本にある,自分の強みをみつける分析ツールみたいなものです (専用IDが必要).書名はなんだか胡散臭いですが,内容は悪くなかったと記憶しています.
以下,私の結果です.
1. 着想
あなたは着想に魅力を感じます。では、着想とは何でしょうか? 着想とは、ほとんどの出来事を最もうまく説明できる考え方です。あなたは複雑に見える表面の下に、なぜ物事はそうなっているかを説明する、的確で簡潔な考え方を発見すると嬉しくなります。着想とは結びつきです。
2. 戦略性
戦略性という資質によって、あなたはいろいろなものが乱雑にある中から、最終の目的に合った最善の道筋を発見することができます。
そして、選ばれた道――すなわちあなたの戦略――にたどり着くまで、あなたは選択と切り捨てを繰り返します。そしてこの戦略を武器として先へ進みます。
3. 社交性
そして一度そのような関係ができ上がると、あなたはそこでそれを終わりにしてまた次の人へ進みます。これから出会う人は大勢います。新しい関係を築く新たな機会があります。これから交流を持つ新しい人の群れがいます。あなたにとって友達でない人はいません。ただ、まだ会っていないだけなのです。沢山の友達が。
4. 最上志向
優秀であること、平均ではなく。これがあなたの基準です。平均以下の何かを平均より少し上に引き上げるには大変な努力を要し、あなたはそこに全く意味を見出しません。平均以上の何かを最高のものに高めるのも、同じように多大な努力を必要としますが、はるかに胸躍ります。
5. 親密性
あなたは親密であることに心地よさを感じます。一旦最初の関係ができあがると、あなたは積極的にその関係をさらに深めようとします。あなたは彼らの感情、目標、不安、夢を深く理解したいと思っています。そして、彼らにもあなたを深く理解してもらいたいと願っています。
言われてみれば確かにそうかもしれないと思うところもしばしばでした (バーナム効果かもしれませんが).自分の弱みを自覚している人は少なく,強みを理解している人はもっと少ない,という言葉をどこかで聞いたことがありますが,そういうものなのかもしれませんね.
2011/10/27
『職業としての学問』
マックス・ウェーバー著『職業としての学問』を読みました.
ポストにつけるかどうかは僥倖である.
学問が価値を示す時代はすでに終わった.
教育者は指導者 (自分の主張を押し付ける) ではない.
など,数十年後に読み返すと,もっと違った見方になるのかもなあ,などと思うようなところがいくつかありました.
いくつか印象に残ったフレーズを抜き書き.
ポストにつけるかどうかは僥倖である.
学問が価値を示す時代はすでに終わった.
教育者は指導者 (自分の主張を押し付ける) ではない.
など,数十年後に読み返すと,もっと違った見方になるのかもなあ,などと思うようなところがいくつかありました.
いくつか印象に残ったフレーズを抜き書き.
学問に生きるものは,ひとり自己の専門に閉じこもることによってのみ,自分はここにのちのちまで残るような仕事を達成したという,おそらく生涯に二度とは味われぬであろうような深い喜びを感じることができる.
ある研究の成果が重要であるかどうかは,学問上の手段によっては論証しえないからである.それはただ,人々が各自その生活上の究極の立場からその研究の成果がもつ究極の意味を拒否するか,あるいは承認するかによって,解釈されうるだけである.
もし悪魔を片づけてやろうと思うならば,こんにち好んでなされるようにこれを避けてばかりいてはいられない,むしろ悪魔の能力と限界を知るために前もってまず悪魔のやり方を底まで見抜いておかなくてはならない.
2011/10/23
トピックから研究課題へ ("The craft of research" 3章)
"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.
今回は,研究課題の立て方について書かれた部分のまとめです.
conflict, description, contribution, developing, …
良い例
静的なトピックの例
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)
今回は,研究課題の立て方について書かれた部分のまとめです.
第3章 研究トピックから研究課題へ
3.2 幅広いトピックをひとつにしぼる
"action" wordsに注意する.これらがないと,トピックは静的なものになり,単なるclaimに終わってしまう.conflict, description, contribution, developing, …
良い例
The history of commercial aviation
↓
The contribution of the military in developing the DC-3 in the early years of commercial aviation
静的なトピックの例
The history of commercial aviation (topic)
↓
Commercial aviation has a history (claim)
3.3 しぼったトピックから研究課題へ
研究トピックの立て方- 歴史について考えてみる より大きな文脈の中でどう位置づけられるか?内部にどのような歴史があったのか?
- 構造や構成について考えてみる より大きな構造の中でどのようなはたらきをになっているか?システムとしてどのように統合されているか?
- どうカテゴライズされるか考えてみる 対象はどんなグループに分類できるか?他のものと比較してどうか?
- 肯定的な問いを否定的なものにしてみる ◯◯は300年間続いた → ◯◯はなぜ300年間しか続かなかったのか?
- もし を考えてみる もし◯◯が存在していなかったら?
- 参考文献の示唆している問いについて考えてみる たいてい考察の最後にopen questionが示してある.
- いくつかの問いを比較してみる いくつかの問いをまとめて,より重要なひとつの問いにしたり.
3.4 研究課題からsignificanceへ
- TOPIC: Name your topic. I am trying to learn about (working on, studying) _____,
- QUESTION: Add an indirect question. because I want to find out who/what/when/where/whether/why/how _____,
- SIGNIFICANCE: Answer So what? by motivating your question. in order to help my readers understand _____.
action words を用いて空欄を埋める.
So what? に答えられるだけのsignificanceをもっていなければならない.
専門とする分野の人にとって重要なissueに触れている必要がある.
脚注
※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)
構成と論拠の修正 ("The craft of research" 14章)
"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.
今回は,原稿の修正について書かれた部分からの抜き書きです.
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)
今回は,原稿の修正について書かれた部分からの抜き書きです.
14章 文章の構成と論拠を修正する
14.2 原稿の枠組みを修正する
読者が,即座に間違いなく,以下の3点を認識できるようにしておかなければならない.- イントロダクションの終わるところ
- 結論のはじまるところ
- 要点を提示している文章
14.3 論拠を修正する
参考: 論拠の構築14.3.2 論拠の質を評価してみる
読者があなたの論拠を却下する原因はなんだろうか.- あげられた証拠は十分か,信頼できるか,主張と明確に結びついているか?
- ノートにとった数字と打ち込んだデータは一致しているか?
- 引用やデータと主張との結びつきは明確か?
- 主要な理由と,それを支える証拠のあいだのsubreasonsをすっとばしていないか?
- 論拠の妥当性を適切に見積もっているか? probably, most, often, mayなどの保険をかけておかなくて大丈夫か?
- あり得る他の見方や反論についてきちんと認識しているか?
- 文章にしていない根拠を,文章にして表現すべきか?
14.4 原稿の構成を修正する
- key termsは文章の全体を通して出現してきているか?
- イントロと結論にあるkey termを丸で囲ってみる
- 本文にある同じtermsも丸で囲む
- key termsと関連する語に下線をひく
- 大部分のパラグラフに,それらのkey termsがひとつも書かれていなかったら,読者は,あなたの原稿を不明瞭に感じるだろう.
- sectionやsub-sectionが始まることを表すシグナルは,明確に示されているか?
- 主要なsectionの始まりに,前のsectionとの関係を表すシグナルがあるか?
- ひとつひとつのsectionが全体とどう関係しているか明確にわかるか? それぞれのsectionについて,このsectionはどんな問いに答えているか?と考えてみること.答えられなかったら,その部分の削除を考えても良い.
- そのsectionの要点が簡潔に示されているか?
- そのsectionを性格づける見出しは個性的か? 全体を通した性格づけと変わるところがないなら,読者は,新たなアイデアが提示されていないと読むだろう. 他のsectionと同じであったなら,同じことが繰り返されていることになる.
脚注
※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)
2011/10/18
Revising Style ("The craft of research" 17章)
"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.
明瞭でわかりやすい英文を書く際に,17章 Revising Style は非常に参考になりそうなので,英文のまま引用します.本文では例があげられ詳しく説明されています.少しでも興味があればぜひ原書をご覧ください.
17.2.2Subjects and Characters
17.2.3 Verbs, Nouns, Actions
17.2.4 Diagnosis and Revision
17.5.2 Introducing Complex Information
17.5.3 Introducing What Follows
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)
明瞭でわかりやすい英文を書く際に,17章 Revising Style は非常に参考になりそうなので,英文のまま引用します.本文では例があげられ詳しく説明されています.少しでも興味があればぜひ原書をご覧ください.
17.2 THE FIRST TWO PRINCIPLES OF CLEAR WRITING
17.2.1 Distinguishing impressions from Their CausesFor that, you need a way to think about sentences that connects an impression like confusing to what it is in the sentence, on the page that confuses you.
The principles focus on only two parts of a sentence: the first six or seven words and the last four or five. Get those words straight, and the rest of the sentence will (usually) take care of itself.
17.2.2Subjects and Characters
Readers will judge your sentences to be clear and readable to the degree that you make their subjects name the main characters in your story.
17.2.3 Verbs, Nouns, Actions
- Express crucial actions in verbs.
- Make your central characters the subjects of those verbs; keep those subjects short, concrete, and specific.
17.2.4 Diagnosis and Revision
To diagnose:
- Underline the first six or seven words of every clause, whether main or subordinate.
- Perform two tests:
- Are the underlined subjects concrete characters, not abstractions?
- Do the underlined verbs name specific actions, not generalness like have, make, do, be, and so on?
- If the sentence fails either test, you should probably revise.
To revise:
- Find the characters you want to tell a story about. If you can't, invent them.
- Find what those characters are doing. If their actions are in nouns, change them into verbs.
- Create clauses with your main characters as subjects and their actions as verbs.
17.3 A THIRD PRINCIPLE: OLD BEFORE NEW
Readers follow a story most easily if they can begin each sentence with a character or idea that is familiar to them, either because it was already mentioned or because it comes from the context.
To diagnose:
- Underline the first six or seven words of every sentence.
- Have you underlined words that your readers will find familiar and easy to understand (usually words used before)?
- If not, revise.
To revise:
- Make the first six or seven words refer to familiar information, usually something you have mentioned before (typically your main characters).
- Put at the ends of sentences information that your readers will find unpredictable or complex and therefore harder to understand.
17.4 CHOOSING BETWEEN ACTIVE AND PASSIVE
Rather than worry about active and passive, ask a simpler question: Do your sentences begin with familiar information, preferably a main character? If you put familiar characters in your subjects, you will use the active and passive properly.
17.5 A FINAL PRINCIPLE: COMPLEXITY LAST
17.5.1 Introducing Technical TermsWhen you introduce technical terms new to your readers, construct your sentences so that those terms appear in the last few words.
17.5.2 Introducing Complex Information
Put complex bundles of ideas that require long phrases or clauses at the end of a sentence, never at the beginning.
17.5.3 Introducing What Follows
When you start a paragraph, put at the end of its first or second sentence the key terms that appear in the rest of the paragraph.
脚注
※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)
2011/10/16
イントロと結論 ("The craft of research" 16章)
"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.
今回は,イントロダクションと結論について書かれた部分からの抜き書きです.
読者よ,おそらくあなたは◯◯について知っているだろう.しかし,あなたの知識には不足または不完全なところがある…
研究上の問題の提示は以下2つの部分に分けられる.
・知識や理解が不完全であるという状態 (a condition)
・その状態の帰結 (consequences)
誰かが,それでどうなっちゃうの?と聞いてきてくれる場面が想像できるなら,この状態の解決は,十分な研究上の問題になり得る.
次にするのは,その帰結を,直接的なコスト (◯◯が不完全なので,より大きな問題である××が解決できない) または利益に変換したかたち (もし◯◯を明らかにできれば,××を決定できる) で,示すこと.
または,ここでは示さないが,Conclusionや本文中で答えを提示すると約束する (point-last paper).しかし後者のスタイルは,読者に本文を読む (余計な) 時間を要求することになるため,推奨されない.
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)
今回は,イントロダクションと結論について書かれた部分からの抜き書きです.
16章 IntroductionとConclusion
16.1 Introductionに共通する構造
Context + Problem + Response.16.2 ステップ1: 共通の土台を確立する
共通の土台にある (すでに知られており明らかに問題がない) 話題からはじめる.そして,問題を提示する.読者よ,おそらくあなたは◯◯について知っているだろう.しかし,あなたの知識には不足または不完全なところがある…
16.3 ステップ2: 問題を述べる
共通の土台を確立したなら,問題を提示することでそれを乱す.研究上の問題の提示は以下2つの部分に分けられる.
・知識や理解が不完全であるという状態 (a condition)
・その状態の帰結 (consequences)
誰かが,それでどうなっちゃうの?と聞いてきてくれる場面が想像できるなら,この状態の解決は,十分な研究上の問題になり得る.
次にするのは,その帰結を,直接的なコスト (◯◯が不完全なので,より大きな問題である××が解決できない) または利益に変換したかたち (もし◯◯を明らかにできれば,××を決定できる) で,示すこと.
16.4 ステップ3: 自分のだした答えを述べる
Introductionの最後で,主張のポイントまたは解決策を明確に述べる.または,ここでは示さないが,Conclusionや本文中で答えを提示すると約束する (point-last paper).しかし後者のスタイルは,読者に本文を読む (余計な) 時間を要求することになるため,推奨されない.
16.6 Conclusionを書く
16.6.1 主張の要点 (Main point) からはじめる
Conclusionのはじめのほうで,要点を述べる.既出であったら,またきちんと繰り返す.16.6.2 新たな Significance や応用を述べる
要点を述べたら,なぜそれに意味があるのかを示す.16.6.3 さらなる研究の必要性を示唆する
この研究からは結論がでたが,まださらなる研究が必要である.脚注
※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)
論拠の構築 ("The craft of research" 7-11章)
"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.
今回は,論拠を構築する,ということについて書かれた部分からの抜き書きです.
論拠は以下の5つの問いに答えることによって構築される.
-----
1. 主張 (claim) は何か?
2. その主張を支える理由 (reason) は何か?
3. その理由を支える証拠 (evidence) は何か?
4. 別な可能性 (alternatives) / もっと複雑な証拠 (complications) / 反対意見 (objections) を認識しているか?そしてそれらにどう対応するか?
5. 2の理由から1の主張が導かれるのを妥当 (relevant) にする原理 (principle) は何か? (この原理は根拠 (warrant) と呼ばれる)
-----
・理由は,私たちの精神のはたらきによって思いつかれる.
・証拠は,「その外」の「物質的な」現実世界にあり,誰もがわかるようなかたちにして示さなければならない.
7.3 予期される問いかけや反論を認識し,それらに答える
p. 116
CLAIM because of RESON based on EVIDENCE...
ACKNOWLEDGEMENT AND RESPONSE I acknowledge these questions, objections, and alternatives, and I respond to them with these arguments…
WARRANT The principle that lets me connect my reason and claim is...
もっとも意味のある主張は,研究者のコミュニティがこれまで深く信じてきた考えに変革を迫るものである.
読者は,研究が新たなデータを示しているだけでなく,そのデータを利用して,不可解な,矛盾した,問題になっていたトピックを解決したときに,その研究をより高く評価する.
さらに言うと,読者は,解決済みだと長く考えられていたトピックがひっくり返されたときに,新たな証拠をもっとも高く評価する.
研究者は,読者と「証拠それ自体」を共有することはできない.
9.4.1 証拠を正確に報告する
もし自分自身が,その証拠にあやしいところがあることを認識しているなら,信用できないとしてその証拠を却下するのではなく,自分自身が懸念しているということを表すこと.そうすれば,不正直なふるまいとはならない.
あなたの論拠に対し読者が問いかける可能性があるのは,以下の2つの点に関してである.
・内部的な健全性 (intrinsic soundness): 主張の明確さ,理由の妥当性,証拠の信用性.
・外部的な健全性 (extrinsic soundness): 問題を別な視点でとらえられる可能性,見過ごされていた証拠,同じトピックに対する他者の議論.
読者が気づかないことを期待してその欠点を無視することは可能だが,それは不正直である.もしみつかれば,その論拠のみならず,あなた自身の倫理や評判にも疑惑の目が向けられ,致命的なダメージを受けるだろう.
ひとつの方法は,素直だが,実際に効果のあるものだ.欠点をしっかりと認識し,
・その他の議論で欠点が補われている
・欠点は深刻だが,さらなる研究によって解決される
.欠点があるため主張をすべて受け入れてもらうことはできないが,この主張は問題に対して洞察を与え,より良い答えが必要であることを示唆した
ということを示す.
p. 147
may は一般的な認識の語句である.
p.148
but, however, on the other hand など不賛成のシグナルとともに,反論を開始する.
理由付けの背後にあるロジックは以下のとおり.
一般的に言われている論拠が真であるならば,それに関わる何か特定の例もまた真である.
・読者が正しいと認めたがらないような主張をするとき.
読者が反抗すると考えられる理由や主張を展開する前に,読者が受け入れると考えられる根拠を示すことからはじめるのが良い.そうすれば,少なくとも,主張が合理的でないと見られてしまうのを防ぐくらいにはなる.
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)
今回は,論拠を構築する,ということについて書かれた部分からの抜き書きです.
7章 良い論拠 (argument) を構築する
7.1 読者との対話としての論拠
p. 109論拠は以下の5つの問いに答えることによって構築される.
-----
1. 主張 (claim) は何か?
2. その主張を支える理由 (reason) は何か?
3. その理由を支える証拠 (evidence) は何か?
4. 別な可能性 (alternatives) / もっと複雑な証拠 (complications) / 反対意見 (objections) を認識しているか?そしてそれらにどう対応するか?
5. 2の理由から1の主張が導かれるのを妥当 (relevant) にする原理 (principle) は何か? (この原理は根拠 (warrant) と呼ばれる)
-----
7.2 主張を支える
p. 111・理由は,私たちの精神のはたらきによって思いつかれる.
・証拠は,「その外」の「物質的な」現実世界にあり,誰もがわかるようなかたちにして示さなければならない.
7.3 予期される問いかけや反論を認識し,それらに答える
7.4 理由の妥当性を保証する
p. 116CLAIM because of RESON based on EVIDENCE...
ACKNOWLEDGEMENT AND RESPONSE I acknowledge these questions, objections, and alternatives, and I respond to them with these arguments…
WARRANT The principle that lets me connect my reason and claim is...
8章 主張を決める
8.2.2 主張を意味あるもの (significant) にする
p.124もっとも意味のある主張は,研究者のコミュニティがこれまで深く信じてきた考えに変革を迫るものである.
読者は,研究が新たなデータを示しているだけでなく,そのデータを利用して,不可解な,矛盾した,問題になっていたトピックを解決したときに,その研究をより高く評価する.
さらに言うと,読者は,解決済みだと長く考えられていたトピックがひっくり返されたときに,新たな証拠をもっとも高く評価する.
9章 理由と証拠を組み立てる
9.3 証拠それ自体と,証拠を報告することを,きちんと区別しておく
p. 133研究者は,読者と「証拠それ自体」を共有することはできない.
9.4.1 証拠を正確に報告する
もし自分自身が,その証拠にあやしいところがあることを認識しているなら,信用できないとしてその証拠を却下するのではなく,自分自身が懸念しているということを表すこと.そうすれば,不正直なふるまいとはならない.
10章 認識と対応
p. 139あなたの論拠に対し読者が問いかける可能性があるのは,以下の2つの点に関してである.
・内部的な健全性 (intrinsic soundness): 主張の明確さ,理由の妥当性,証拠の信用性.
・外部的な健全性 (extrinsic soundness): 問題を別な視点でとらえられる可能性,見過ごされていた証拠,同じトピックに対する他者の議論.
10.1 読者がするように,あなた自身の論拠にケチをつけてみる
自分に間違ってもらいたいと考えている利害関係者のような視点から,自身の論拠を読んでみる.そして,彼らが投げかけると予期されるもっとも厳しい反論について,あらかじめ答えておく.彼らがそれを実際に投げかけてくる前に.10.3.2 答えられない問いかけを認識しておく
もし,解決したり説明しきったりできない欠点を発見したなら,それを避けるために,問題を再定義したり,論拠を再構築しなければならない.しかしそれが不可能なら,タフな決断が必要とされる.読者が気づかないことを期待してその欠点を無視することは可能だが,それは不正直である.もしみつかれば,その論拠のみならず,あなた自身の倫理や評判にも疑惑の目が向けられ,致命的なダメージを受けるだろう.
ひとつの方法は,素直だが,実際に効果のあるものだ.欠点をしっかりと認識し,
・その他の議論で欠点が補われている
・欠点は深刻だが,さらなる研究によって解決される
.欠点があるため主張をすべて受け入れてもらうことはできないが,この主張は問題に対して洞察を与え,より良い答えが必要であることを示唆した
ということを示す.
10.5 認識と対応のための語彙
実例がいろいろ.p. 147
may は一般的な認識の語句である.
p.148
but, however, on the other hand など不賛成のシグナルとともに,反論を開始する.
11章 論拠
11.1 論拠とは,日常的な理由付けである
p. 153理由付けの背後にあるロジックは以下のとおり.
一般的に言われている論拠が真であるならば,それに関わる何か特定の例もまた真である.
11.5 いつ論拠を言明するか考えてみる
p. 163・読者が正しいと認めたがらないような主張をするとき.
読者が反抗すると考えられる理由や主張を展開する前に,読者が受け入れると考えられる根拠を示すことからはじめるのが良い.そうすれば,少なくとも,主張が合理的でないと見られてしまうのを防ぐくらいにはなる.
脚注
※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)
2011/10/14
『これから論文を書く若者のために』再読
酒井聡樹 著『これから論文を書く若者のために 大改訂増補版』 (共立出版, 2006年) を再読して,内容の覚え書き ※1 と感想です.
論文を書こうとする大学院生のバイブルのような本ですので,未読の方はぜひご覧になることをおすすめします.
・どうしてやるのか
どうしてやるのか はさらに以下のように分解できる.
・どういう問題があるのか
・どうしてその問題に取り組むのか
・その問題の解決のために「何をやるのか」を行なう理由
2. 何を前にして: どういう問題があるのかの説明
1. 何をやるのか: その論文でやったこと
4. どういう着眼で: その問題の解決のために「何をやるのか」を行なう理由の説明
ブレークダウンすると,
・結果の章で提示したデータに基づいて,こういうことを明らかにしたという主張を展開する
・イントロダクションで提起した問題の解決に向けてどう貢献したのかを述べる
・その問題を解決したことでもたらされる,より一般的な学術的意義を述べる
・今後の発展を述べる
・結論を述べる
ということになる.
論文を書くというのは,自分の主張を小さくしていく作業である.
具体的には以下に気をつける.
・どうしてやるのかは不要
・結論は明確に
・短い文章で
あなたが説明しやすい方を選ぶ.
・レフリーというより,担当編集委員を説得することを心がける (編集委員は,リジェクトして論文を減らすのがお仕事)
・労力を惜しまない
・全コメントに対応して改訂した後,改訂稿の全体を読み直し,筋が通っているかどうか確認する
・一日でも早く改訂して返送する
・直すようにと指摘のあった部分以外は直さない
・新しい研究を進めなくてはと焦りを感じる
・自分は今,研究をしていない
こんな風に思っていないだろうか.
これらはいずれも,とんでもない勘違いだ.論文執筆は研究の重要部分であり,執筆に集中することは,研究完成に向けて時間を有効に使っていることである.
「勉強」のために読むのではない.
すでに読まれたことのある方も,もう一度読み返してみると,新たに得るところがあるかもしれません.
論文を書こうとする大学院生のバイブルのような本ですので,未読の方はぜひご覧になることをおすすめします.
覚え書き
イントロ
以下の2点を説明する必要がある.
・何をやるのか・どうしてやるのか
どうしてやるのか はさらに以下のように分解できる.
・どういう問題があるのか
・どうしてその問題に取り組むのか
・その問題の解決のために「何をやるのか」を行なう理由
どこまで説明するか?
その学術雑誌の読者の共通理解のところまでさかのぼって.イントロ折り紙
3. どうして取り組むのか: どうしてその問題に取り組むのかの説明2. 何を前にして: どういう問題があるのかの説明
1. 何をやるのか: その論文でやったこと
4. どういう着眼で: その問題の解決のために「何をやるのか」を行なう理由の説明
考察
こういうことを明らかにしたと明確に主張することが考察の章の使命である.ブレークダウンすると,
・結果の章で提示したデータに基づいて,こういうことを明らかにしたという主張を展開する
・イントロダクションで提起した問題の解決に向けてどう貢献したのかを述べる
・その問題を解決したことでもたらされる,より一般的な学術的意義を述べる
・今後の発展を述べる
・結論を述べる
ということになる.
論文を書くというのは,自分の主張を小さくしていく作業である.
アブストラクト
アブストラクトは,世界に向けて発信する,論文の紹介記事.具体的には以下に気をつける.
・どうしてやるのかは不要
・結論は明確に
・短い文章で
図表
図にするか表にするか?あなたが説明しやすい方を選ぶ.
査読と改訂
レフリーのコメントは,英語を習いたての中学生のように読むべきだ.改訂をするうえでの心構え
・アクセプトが保証されていると思わない・レフリーというより,担当編集委員を説得することを心がける (編集委員は,リジェクトして論文を減らすのがお仕事)
・労力を惜しまない
・全コメントに対応して改訂した後,改訂稿の全体を読み直し,筋が通っているかどうか確認する
・一日でも早く改訂して返送する
改訂の際に守るべき約束事
・レフリーと担当編集委員の,すべてのコメントに対応する・直すようにと指摘のあった部分以外は直さない
リジェクトされたら
どこかの大先生に論文を読んでもらったのだと思うこと.効率のよい執筆作業
論文執筆のみに時間を費やすことを
・時間がもったいない・新しい研究を進めなくてはと焦りを感じる
・自分は今,研究をしていない
こんな風に思っていないだろうか.
これらはいずれも,とんでもない勘違いだ.論文執筆は研究の重要部分であり,執筆に集中することは,研究完成に向けて時間を有効に使っていることである.
文献
練り上げた構想に従って論文を完成させるために必要な情報を引き出す.「勉強」のために読むのではない.
感想
学部4年生で卒業研究をはじめた頃にもこの本を読んでいたのですが,修士過程を終え,論文投稿をいくつか経験した今になって読み直すと,あらためて勉強になりました.学部4年生の頃は,研究結果を文章にするということや,査読のプロセスなどについて,ほとんどイメージがわかず,いかにわかりやすい文章を書くかといった部分に注目しがちでした.しかし今,執筆や査読の部分を読んでみると,まったくその通りだとうなずいたり,ああそういうことかと納得するところがしばしばありました.すでに読まれたことのある方も,もう一度読み返してみると,新たに得るところがあるかもしれません.
脚注
※1 記載内容は本から抜き書いた個人的なメモです (私のオリジナルな表現ではありません).また,本の主張を間違って抜き書いている恐れもあります.十分ご注意ください.2011/05/07
読みたい本リスト
ゴールデンウィークに実家の荷物を整理していたら,昔(中学〜高校くらい?)書いた,読みたい本(外国の作品)リストがでてきたので,転載してみます.
さながら世界文学劇場のよう.
すでに読んだことのある本には◯を付記しておきました.
国内の作品バージョンも書いた記憶があるのだけれど,残念ながらそちらはでてきませんでした…
シェイクスピア
・ロミオとジュリエット ◯
・オセロー
・リア王
・真夏の夜の夢
・マクベス
スタンダール
・赤と黒 ◯
・パルムの僧院
バルザック
・ゴリオ爺さん
・谷間の百合
・農民
ジッド
・背徳者
・狭き門 ◯
・にせ金つかい
プルースト
・失われた時を求めて
テグジュペリ
・夜間飛行 ◯
・人間の土地 ◯
サルトル
・嘔吐
・壁
・蠅
カミュ
・異邦人 ◯
サガン
・悲しみよこんにちは
・ブラームスはお好き
ゲーテ
・若きウェルテルの悩み ◯
・ファウスト ◯
マン
・魔の山 ◯
ツルゲーネフ
・ルージン
ドストエフスキー
・罪と罰 ◯
・白痴 ◯
・カラマーゾフの兄弟 ◯
トルストイ
・戦争と平和
・アンナ・カレーニナ
・イワンのばか ◯
チェーホフ
・かもめ
・ワーニャ伯父さん
・三人姉妹
・桜の園
さながら世界文学劇場のよう.
すでに読んだことのある本には◯を付記しておきました.
国内の作品バージョンも書いた記憶があるのだけれど,残念ながらそちらはでてきませんでした…
シェイクスピア
・ロミオとジュリエット ◯
・オセロー
・リア王
・真夏の夜の夢
・マクベス
スタンダール
・赤と黒 ◯
・パルムの僧院
バルザック
・ゴリオ爺さん
・谷間の百合
・農民
ジッド
・背徳者
・狭き門 ◯
・にせ金つかい
プルースト
・失われた時を求めて
テグジュペリ
・夜間飛行 ◯
・人間の土地 ◯
サルトル
・嘔吐
・壁
・蠅
カミュ
・異邦人 ◯
サガン
・悲しみよこんにちは
・ブラームスはお好き
ゲーテ
・若きウェルテルの悩み ◯
・ファウスト ◯
マン
・魔の山 ◯
ツルゲーネフ
・ルージン
ドストエフスキー
・罪と罰 ◯
・白痴 ◯
・カラマーゾフの兄弟 ◯
トルストイ
・戦争と平和
・アンナ・カレーニナ
・イワンのばか ◯
チェーホフ
・かもめ
・ワーニャ伯父さん
・三人姉妹
・桜の園
2011/03/10
私の個人主義
先週、夏目漱石『私の個人主義』を読んだ。
漱石の言いたいこと・気持ちが、手に取るようにとてもよくわかったような気がした。
長い悩みと迷いの後に、自分のすべきことが見えたときの気持ちが、そこに表れていた。
そして、すべては自分しだいであるという強さが見えてくる。
こんな迷いが、
という気づきに変わる。そして、
という「自己本位」を手に入れる。
この「自己本位」という言葉、何を意味しているのかはとてもよくわかるのだけれど、それを言い表せるちょうどいい自分の言葉がなかなかみつからなかった。
(これをうまく言い表せなかったため、『私の個人主義』を読んでこのエントリを書くまでに一週間以上の時間が空いた。)
それでも、やっとなんとかみつけることができて、それは、「したいことをすればいい」ということだった。
これについては日を改めて書くことにしたい。(書きました)
最後に、ちょっと勇気づけられる一文を。
漱石ですら、30歳に至るまで、自分の「したいこと」をみつけられなかった。
20年以上生きてきてやっと、自分は「したいこと(人類学の研究)」に気づいたけれど、まだまだ遅くはなかったな、とあらためて思ったりした。
漱石の言いたいこと・気持ちが、手に取るようにとてもよくわかったような気がした。
長い悩みと迷いの後に、自分のすべきことが見えたときの気持ちが、そこに表れていた。
そして、すべては自分しだいであるという強さが見えてくる。
私はこの世に生れた以上何かしなければならん、といって何をして好いか少しも見当がつかない。私はちょうど霧の中に閉じ込められた孤独の人間のように立ち竦んでしまったのです。
私は私の手にただ一本の錐さえあればどこか一カ所突き破って見せるのだがと、焦燥り抜いたのですが、あいにくその錐は人から与えられる事もなく、また自分で発見する訳にも行かず、ただ腹の底ではこの先自分はどうなるだろうと思って、人知れず陰欝な日を送ったのであります。
こんな迷いが、
ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた! こういう感投詞を心の底から叫び出される時、あなたがたは始めて心を安んずる事ができるのでしょう。
という気づきに変わる。そして、
この時私は始めて文学とはどんなものであるか、その概念を根本的に自力で作り上げるよりほかに、私を救う途はないのだと悟ったのです。
私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。彼ら何者ぞやと気慨が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自我本位の四字なのであります。
という「自己本位」を手に入れる。
この「自己本位」という言葉、何を意味しているのかはとてもよくわかるのだけれど、それを言い表せるちょうどいい自分の言葉がなかなかみつからなかった。
(これをうまく言い表せなかったため、『私の個人主義』を読んでこのエントリを書くまでに一週間以上の時間が空いた。)
それでも、やっとなんとかみつけることができて、それは、「したいことをすればいい」ということだった。
これについては日を改めて書くことにしたい。(書きました)
最後に、ちょっと勇気づけられる一文を。
腹の中の煮え切らない、徹底しない、ああでもありこうでもあるというような海鼠のような精神を抱いてぼんやりしていては、自分が不愉快ではないか知らんと思うからいうのです。不愉快でないとおっしゃればそれまでです、またそんな不愉快は通り越しているとおっしゃれば、それも結構であります。願くは通り越してありたいと私は祈るのであります。しかしこの私は学校を出て三十以上まで通り越せなかったのです。
漱石ですら、30歳に至るまで、自分の「したいこと」をみつけられなかった。
20年以上生きてきてやっと、自分は「したいこと(人類学の研究)」に気づいたけれど、まだまだ遅くはなかったな、とあらためて思ったりした。
2011/02/20
科学コミュニケーションと寺田寅彦
公開用のブログに書いた内容の転載。
科学コミュニケーションの目的は、「科学やその楽しさを伝えること」であって、「科学コミュニケーションをすること」ではない。
そんなことを考えていたら、寺田寅彦の随筆にぴったりな文章があったので、抜き出してみる。
寺田寅彦 『案内者』 より
何事によらず、気をつけた方がよさそうですね。
科学コミュニケーションの目的は、「科学やその楽しさを伝えること」であって、「科学コミュニケーションをすること」ではない。
そんなことを考えていたら、寺田寅彦の随筆にぴったりな文章があったので、抜き出してみる。
思うにうっかり案内者などになるのは考えものである。黒谷や金閣寺の案内の小僧でも、始めてあの建築や古器物に接した時にはおそらくさまざまな深い感動に動かされたに相違ない。それが毎日同じ事を繰り返している間にあらゆる興味は蒸発してしまって、すっかり口上を暗記するころには、品物自体はもう頭から消えてなくなる。残るものはただ「言葉」だけになる。目はその言葉におおわれて「物」を見なくなる。
職業的案内者がこのような不幸な境界に陥らぬためには絶えざる努力が必要である。自分の日々説明している物を絶えず新しい目で見直して二日に一度あるいは一月に一度でも何かしら今まで見いださなかった新しいものを見いだす事が必要である。
考えてみると案内者になるのも被案内者になるのもなかなか容易ではない。すべての困難は「案内者は結局案内者である」という自明的な道理を忘れやすいから起こるのではあるまいか。景色や科学的知識の案内ではこのような困難がある。
寺田寅彦 『案内者』 より
何事によらず、気をつけた方がよさそうですね。
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