「あり得た未来」に焦点をおくことは,可能性に着目しているようで,でも実はそうでもない.こうすることもできたはず,こうであっても良かったのに,なんでそうなっていないのか….そこにあるのは,過去と今を素直に受け入れられない,肥大した期待である.価値観や偏見と言い換えても良いかもしれない.
人や自分は,きっと,いろんな生き方を思い描いて,それでも結局のところ,いま生きているようにしか生きられなかった.
そして,それで十分ではないかと,あるときから思えるようになった.人に対しても,自分に対しても.
人は生きてきて,とにかく今,そうなっている.自分はどうしてここに居るんだろうとか,この人はどうしてこんなことになっているんだろうとか,考えたとき,そこに「あり得た未来」を持ち込むと,期待によって目が曇る.そのままを,愛でることができなくなる.
期待なんて必要なくて,いまここに生きてきたところを素直に観察する.「ふむふむ,そうなんだ」.本当の可能性は,きっと,そこから広がっていく.